
建設機械や農業機械の稼働に欠かせないゴムクローラー(正式名称は無限軌道)は、長時間の使用により摩耗や劣化が避けられない消耗品です。
通常、寿命を迎えたゴムクローラーは「産業廃棄物」として適正に処分される必要がありますが、状態次第では「中古品(有価物)」として再販されるケースもあるようです。
では、中古ゴムクローラーを売却する際に注意すべきポイントは何か。
本記事では、有価物としての取り扱い条件、買い手のニーズ、取引時の注意点、処分との違いなどを法的な観点と実務的な観点から解説します。
ゴムクローラーの基本的な位置づけと廃棄物との関係
ゴムクローラーとは?
ゴムクローラーは、ショベルカーやミニユンボ、コンバインなどのクローラー式車両に装着されるゴム製の履帯で、地面へのダメージを抑えるとともに、機体の走行安定性や牽引力を高めます。
また、市街地などの工事で騒音を抑える必要があったりする場合に重宝されます。ゴムクローラーは内部に金属芯(芯金)が組み込まれているのが特徴で、そのためは使用後に産業廃棄物として処分する際には「廃プラスチック類+金属くず」の混合物として扱われます。
有価物と産業廃棄物の違い
産業廃棄物処理法(廃掃法)では、事業活動から発生した不要物は原則として「産業廃棄物」とされ、適正な処理とマニフェストによる管理が義務づけられています。
ただし、「有価物」として再利用の意思と経済的価値が明確で市場が形成されている場合は、産業廃棄物に該当しません。
分類 | 定義 | 例 |
---|---|---|
有価物 | 再利用目的で取引可能な物(対価が発生) | 中古として売却可能なゴムクローラー |
産業廃棄物 | 廃棄を目的とした不要物 | 摩耗や破損により使えないゴムクローラー |
注意点としては、中古のゴムクローラーを売り手が1本1万円で売却できたとしても、運賃や手数料などの名目などで1万円を超える金額を支払う場合では、売り手は持ち出しが発生してしまうため、有価物(売却)として認められず「産業廃棄物」とみなされる場合があります。
売り手の手元にお金が残るような状況でないと産業廃棄物とみなされ、マニフェストが必要になります可能性がありますので注意が必要です。
中古ゴムクローラーの需要と市場動向
中古ゴムクローラーは売れるのか?
一定の条件を満たせば中古ゴムクローラーは国内外で売れるケースがあります。
1. 国内の整備業者・建機販売業者
中古機械と合わせてゴムクローラーを調達する場合、新品価格の高さを回避するために中古を探すことがあります。
2. 中古部品専門商社・リユース部品市場
再販ルートを持つ業者は、使用可能な中古品を引き取り再整備して再販することがあります。
3. 海外への輸出(アジア・アフリカ・中東など)
特に東南アジアやアフリカなどでは、日本製建機とその部品の中古需要が高く、ゴムクローラーが売れる場合もあります。
買い手が求める中古ゴムクローラーの条件
では、どのようなゴムクローラーが売れるのでしょうか? 以下のような条件を満たすことが理想です。
条件 | 内容 |
---|---|
溝が深く残っている | 摩耗が少ない新古品など |
鉄芯や側面の破損がない | 変形やヒビがあると使用困難 |
製造年数が新しい | 使用年数が短いほうが信頼されやすい |
型式やサイズが明記されている | 対応建機への装着可否を判断しやすい |
セット販売が可能 | 片側だけより左右2本セットが望ましい |
写真を撮影し、品番・溝の状態・芯金の様子などを明確にすることで、取引の信頼性が高まります。
実際の売却方法とその流れ
産業廃棄物とされがちな資材や部品も、条件を満たせば「有価物」として売却が可能です。
ここでは、その具体的な手順と注意点を順を追ってご紹介します。
オークションサイトには中古建機部品を取り扱うものもあり、いくつか実際に出品されているケースもあります。送料と売却価格に注意が必要です。
売買契約書または請求書・領収書により、金銭取引が発生することを明確にします。これにより、後から「廃棄物だった」と疑われるリスクを減らせます。
業者が引き取りに来るか、自社で運搬するかで方法は異なります。自社運搬の場合は運搬車両に「産業廃棄物」の標示は不要ですが、産廃との混載は避けましょう。
取引における法的注意点
中古品や資材の売却においては、思わぬ法的リスクが潜んでいます。ここでは、トラブルを避けるために押さえておくべき重要なポイントを解説します。
無償譲渡は要注意
無償での譲渡は、再使用の実態が不明確な場合、「処分逃れ」と見なされる恐れがあります。これにより、排出事業者としての責任を問われる可能性があるため注意が必要です。
少額でも対価を設定し、売買契約書や請求書などの書面を残しておくことで、リスクを大幅に減らせます。
対象物の状態記録と保管
有価物としての取引を証明するためには、引き渡し前の写真や状態説明、相手先とのメール・請求書などのやり取りを記録・保管しておくことが重要です。
こうした記録があれば、万が一行政指導が入った際にも、「廃棄物ではなく再利用目的での取引だった」と説明する根拠になります。
海外輸出時の注意点
ゴムクローラーなどの海外輸出では、通関時に「再使用目的」か「廃棄目的」かを厳しく問われます。環境省の「有害廃棄物等の輸出入等に関するガイドライン」を参考に、必要な手続きを事前に確認しておきましょう。
もし廃棄物と判断された場合、輸出違反となり罰則を受ける可能性があるため、十分な注意が必要です。
売れないゴムクローラーの処分方法
売却が難しいゴムクローラーは、産業廃棄物として適切な処分が求められます。以下は処分の流れです。
- 【契約】産業廃棄物処分業者と契約締結(収集運搬・中間処理)
- 【運搬】収集運搬業者がマニフェストとともに回収
- 【処理】切断や破砕処理での中間処理ののち、金属とゴムの分離、素材別リサイクルまたは焼却などの最終処分
- 【管理】排出事業者によるマニフェストの保管と報告
クローラーの重量に異なることがほとんどです。詳しくはお問合せください。
トラブル回避のためのポイント
有価物としての適切な取引を行うには、法令だけでなく実務面でも注意すべき点がいくつかあります。
以下のチェック項目を参考に、事前の確認と記録を徹底しましょう。
チェック項目 | 内容 |
---|---|
有価であるか | 売却できても諸費用で持ち出しが出れば産廃とみなされる可能性あり。 |
記録の保管 | 写真、契約書、請求書などは必ず保管 |
廃棄物との混同防止 | 他の産廃との混載運搬・保管はNG |
輸出時の確認 | 対象国の環境規制と輸出管理を確認 |
まとめ:再利用か処分か、判断基準を明確に
中古ゴムクローラーは、「摩耗が少なく使用可能な状態であれば」有価物として売却が可能なケースがあるようです。
特に海外需要や部品供給の終了した型式などでは、一定の市場価値を持つケースもあります。
ただし、有価物としての取引には「対価性」「記録の保存」「相手先の明確化」が不可欠です。
これらを怠ると、廃棄物処理法違反として排出事業者責任が問われかねません。売却できない場合は、速やかに適切な処分ルートへ。
再利用と廃棄の判断を正しく行い、適正処理と資源循環の両立を目指しましょう。
よくある質問(FAQ)
違法ではありませんが、廃棄目的の物を「中古」として装って出品することは法的リスクがあります。
安全面で問題があるため、基本的には買取対象外です。処分が推奨されます。
はい。産業廃棄物として適切な処分が必要です。
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