
産業廃棄物は原則として自ら(排出事業者)が処理することとされていますが、それが難しい場合には産業廃棄物処分業者へ処分を委託することができるとされています。
また、産業廃棄物の処分を処分業者へ委託する際には、「産業廃棄物処分委託契約」を結ぶことが法律で義務付けられています。排出事業者は廃棄物の適正に処理し、環境への負荷を最小限に抑える責任があります。
本記事では、間違った処分や不適切な業者へ誤って処分を委託してしまうと環境に負担がかかるだけでなく、排出事業者に対し行政処分などペナルティが課されてしまいます。
そうならないために、行政から許可を受けた産業廃棄物処分業者と産業廃棄物処分委託契約を締結し、産業廃棄物を引き渡してから処分が完了するまでの基本的な手順や注意点について詳しく解説します。
産業廃棄物処分委託契約とは
産業廃棄物処分委託契約とは、産業廃棄物の処分を専門業者に委託する際に締結する契約のことです。「廃棄物処理法」という法律によって定められており、この基準を守らずに処分を行った場合には排出事業者にも罰則が適応となります。
基本的に契約書は処分業者が用意しますが、内容について排出事業者もしっかりと確認し、価格などだけではなく処分方法や法律に則った正式な様式なのかなど自らで確認することが必要です。
廃棄物処理法
(委託契約の義務)
📖 第12条第3項(産業廃棄物の処理に関する規定)
事業者(排出事業者)は、その産業廃棄物の処理を他人に委託する場合には、環境省令で定める基準に従い、処理を確実に行うことができる者に委託しなければならない。
→ 産業廃棄物の処分を委託する際には、適切な契約を締結しなければならないことが明記されています。
(委託基準)
📖 第12条第6項
委託する場合には、環境省令で定める基準に従い、書面による契約を締結しなければならない。
→ 産業廃棄物の処分委託契約は書面で締結することが義務付けられています。
廃棄物処理法施行令(政令)
📖 第6条の2(産業廃棄物の処理の委託基準)
排出事業者は、処理業者に委託する場合には、政令で定める基準に適合する委託契約を締結しなければならない。
→ さらに具体的な基準については、環境省令(施行規則)で定められています。
廃棄物処理法施行規則(環境省令)
📖 第8条の4(産業廃棄物の処理の委託契約の記載事項)
産業廃棄物の処理を委託する場合に締結する契約書には、以下の事項を記載しなければならない。
これに基づき、法定記載項目(契約当事者の情報、産業廃棄物の種類・数量、処理方法、契約期間、再委託の禁止、マニフェストの運用等)が定められています。
次の章では、契約書に記載しなければならない具体的な法定記載事項を確認します。
契約書の法定記載項目

以下の全てが記載されているかを必ず確認しましょう。いずれかが抜けていても正式な書類となりません。
- 契約当事者の氏名・名称および住所
- 委託者(排出事業者)および受託者(処分業者)の氏名または名称・住所
- 産業廃棄物の種類および数量
- 委託する産業廃棄物の種類(廃プラスチック類、金属くず、ガラスくず等)。ゴムクローラーは「廃プラスチック類」「金属くず」の2項目に該当します。両方の許可を受けている産業廃棄物処分業者へ委託することが必要です。
- 具体的な数量(重量や体積など)
- 処分の方法
- 中間処理(焼却、破砕、溶融等)または最終処分(埋立等)の内容
- 契約の有効期間
- 契約開始日および終了日(通常1年更新)
- 処理施設の所在地および処理能力
- 受託者の処分施設の住所
- 施設の許可処理能力(1日あたりの処理量など)
- 再委託の禁止または条件
- 産業廃棄物の処理の再委託を禁止する旨(ただし、特定条件下での再委託を許可する場合もある)
- 委託料金(契約金額)
- 廃棄物処分に関する費用(処理費用・運搬費用など)
- 処分終了後の報告義務
- 委託者への処理完了報告の義務(マニフェストを含む)
- 契約解除に関する事項
- 法令違反や契約違反があった場合の解除条件
- 産業廃棄物処分業許可証
- 収集運搬も併せて委託する際には収集運搬業許可証(「積み地」と「降ろし地」)
委託契約の具体的な手順と契約後について
- 処理業者の選定
- 各都道府県のHPの産業廃棄物処分業者一覧にきちんと委託をしようとしている業者が載っているか。許可証の有無も確認が必要です。
- 収集運搬も併せてお願いしようとする際にはその業者が、排出事業者の排出事業場(ゴムクローラーなどを引き渡す場所)の都道府県知事からの収集運搬許可証を持っているかも確認しましょう。
- 不適切な業者の回避: 無許可業者との契約は違法です。事前に業者の信頼性を十分に確認しましょう。無許可業者と契約をしないためにはどのように調べたらいいのかは以下の記事に注意点や検索方法を記載しておりますので、併せて確認ください。
- 契約書の確認
- 第3章でも述べたように、契約書は原則として処分業者が用意しますが、排出事業者自身が内容を確認し法定記載事項に漏れがないかを確認しましょう。
- 併せて収集運搬も委託する際には、収集運搬業者が排出事業者の排出事業場(ゴムクローラーなどを処分業者へ引き渡す場所)の都道府県知事から収集運搬業許可証を受けているかを確認しましょう。
- 契約の締結
- 契約書は各自押印した物をそれぞれが保管する必要があります。
- 電子契約書の使用も認められており、その際には各自が電子サインを施したものを保存します。
- 基本的に1年契約の契約書を使用するのが一般的ですが、自動更新となっているものがほとんどです。
- 契約内容の管理
- 定期的な契約見直しや処理状況の確認をしましょう。
- 排出場所については契約書に記載のない新たな場所から処分を依頼する場合には新たに覚書などを用いて住所を追記することが必要です。契約書に記載のない排出場所からの排出は法律に違反してしまいますので注意が必要です。
- また、排出事業者は自ら排出した産業廃棄物が適正に処理されているかを産業廃棄物処理業者の元へ確認しに行くことを努力義務として課している自治体もあります。
まとめ
適切な産業廃棄物処分は環境負荷を最小限に抑えるための重要なプロセスです。排出事業者(委託者)は適切な産業廃棄物処分業者と契約し、自身が排出した産業廃棄物がどのような工程でどのように処分され、再利用されているかまで関心を持つことが必要です。
また、そのなかで必要な産業廃棄物処分委託契約は、法令を遵守しつつ環境保護に貢献するための重要な手続きです。適切な業者の選定、法定記載項目を遵守した契約書の作成、マニフェスト管理を徹底することで、トラブルを防止し、安全かつ確実な廃棄物処理を実現しましょう。
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