
事業活動を行う際には必ずといっていいほど産業廃棄物が発生します。発生した産業廃棄物の処理は外部に委託することは一般的ですが、「処分を委託したから安心」という考えは危険です。
排出事業者は、委託先の違法行為に対しても責任を問われることがあります。排出事業者は自身が排出した産業廃棄物の最終的な処分が完了するまで責任を負うのです。
本記事では、排出事業者が負うべき義務と、不適正処分が発覚した際に受ける行政処分や罰則について、自分では適切に処分していたつもりが実は不適正処分の恐れがあったなどといったリスクを回避するため、排出事業者責任と各種罰則について詳しく解説します。
排出事業者とは?その定義と役割
「排出事業者」とは、自社の事業活動に伴って産業廃棄物を排出する法人や個人事業主のことです。
建設業、製造業、運送業、印刷業など幅広い業種が対象になります。
排出事業者は、廃棄物処理法(正式名称:廃棄物の処理及び清掃に関する法律)に基づき、自らの責任で廃棄物を適正に処理する義務があります。
法的根拠(廃棄物処理法の該当条文)
第3条(事業者の責務)
事業者は、自己の事業活動に伴って生じた廃棄物について、生活環境の保全上支障が生じないように、その処理を適正に行わなければならない。
→ これは、排出者自らが適正処理の責任を負うという基本的な考え方を示しています。
第12条第1項
産業廃棄物を排出する事業者は、これを自らの責任において処理しなければならない。
→ 自社で処理するか、適正な許可業者に委託する義務があることが明記されています。
第12条第5項(処分の委託)
排出事業者は、委託契約に基づいて処理を他者に任せた場合でも、その処理が適正に行われていることを確認し、必要に応じて報告を求めるなどの措置を講じなければならない。
→ 処理を委託しても、「最終責任は排出者にある」という点がポイントです。
【出典】環境省:e-Gov法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=345AC0000000137
委託処分しても排出事業者は責任を免れない

廃棄物処理法にも記載のように、廃棄物処理を産業廃棄物処分業者に委託したとしても、排出事業者には「委託責任」があります。
自身は適切に産業廃棄物の委託を行ったとしても、産業廃棄物処分業者が不法投棄などの不適正処理を行った場合、排出事業者が十分な確認を怠っていたと判断されれば、同様に責任を問われます。
<違反事例>
- 許可のない業者に委託していた
- マニフェストの不備または虚偽記載
- 処理状況の確認を怠った
- 委託契約書の記載内容が法定要件を満たしていない
(※産業廃棄物処分委託契約書の法定記載項目については以下の記事をご参照ください。)
排出事業者が受ける可能性のある行政処分
排出事業者に対する処分には、以下のようなものがあります。
- 改善命令(法第19条の5)
都道府県知事または環境大臣は、違反行為があったときに改善を命じることができます。内容に従わなければさらに重い処分へ進展します。 - 命令違反に対する過料(法第33条の3)
改善命令や報告命令に違反した場合、50万円以下の過料が科されることがあります。 - 許可取消しや営業停止(業種によっては該当)
建設業などでは、産業廃棄物処理違反が建設業許可の取消理由になる場合もあり、営業に大きな支障をきたします。
排出事業者が受ける可能性のある刑事罰
産業廃棄物の処分における重大な違反は、刑事罰の対象にもなります。
違反行為 | 主な罰則 |
---|---|
無許可業者への委託 | 5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金(法人は3億円以下)またはその併科。 |
不法投棄への関与・放置 | 同上 |
マニフェストの虚偽記載 | 1年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
2018年4月1日付けの法改正にて罰則規定が改正されており、以前より厳罰化が進んでいます。
排出事業者も「知らなかった」では済まされず、監督不行き届きとされる可能性があります。
排出事業者が行うべき適正処理のポイント
処理委託先の確認
以下の観点を確認したうえで、産業廃棄物処分を委託する業者を選ぶ必要があります。
- 有効な許可証の有無
- 施設の処理能力
- 行政処分歴の有無
排出事業者の「確認義務」は廃棄物処理法で定められている
廃棄物処理法第12条第5項では、排出事業者が処分業者等に産業廃棄物の処理を委託する際に、適正な処理が行われるよう必要な措置を講じなければならないとされています。
これは「監督義務」「確認義務」として、以下が求められることを意味します。
- 契約時の処理内容・許可内容の確認
- マニフェストによる追跡
- 定期的な処理実態の確認(報告書や帳票による確認を含む)
- 可能であれば現地確認(実地視察)
適正な契約書の締結
「産業廃棄物処分委託契約書」は、法定記載事項(処分方法、責任分担、委託範囲など)を満たす必要があります。
マニフェストの活用と管理
- 電子マニフェストを推奨(記録・管理が容易)
- E票までの回収・保存を徹底
- 保管期間は5年間
マニフェストについてよく分からない場合は、以下で詳しく解説していますので、ご確認ください。
現地確認・定期的な処理状況の確認
処分先が適正に稼働しているかを実際に視察・監査し、社内記録に残すことが有効です。
実地視察は「義務」ではないが、強く推奨されている
環境省のガイドラインや多くの自治体では、実地視察を「年1回以上」実施することを望ましいとしています。特に、以下のような場合は実施が強く推奨されます。
- はじめて委託する業者である
- 処理内容が特殊・危険である
- 業者の過去に不適正処理歴がある
- 排出量が多い
視察を行った場合の記録と報告
視察を行った際には、以下の記録を残すことでコンプライアンスの証拠になります。
- 視察報告書(日時・場所・確認事項・写真等)
- 処理状況や保管施設の確認内容
- 廃棄物保管状況、飛散・流出対策の状況
- 処理フローと処理後の最終処分地までの確認
POINT
項目 | 内容 |
---|---|
法的義務 | 実地視察は「明確な法的義務」ではないが、適正処理のための「義務的努力義務」がある |
頻度 | 「年1回程度の実地視察」が行政や環境省によって推奨されている |
記録 | 実施した場合は報告書として記録し、5年間保存が望ましい |
実施目的 | 委託先が適正処理しているか、処理能力や施設状態を自ら確認するため |
まとめ:排出事業者の法令遵守が企業価値を守る

産業廃棄物処理は外注すれば終わりではなく、排出事業者自身の監督責任が問われる時代です。不適正処分が発覚すれば、法的責任に加えて社会的信用も大きく損なわれます。
環境コンプライアンスを徹底することが、長期的な企業経営においても大きなリスクヘッジとなります。
限りある環境を社会全体で守っていくために各企業の意識の向上を図っていきましょう。
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