ゴムクローラーの不法投棄事例とは?処分リスクを避けるために知っておくべきこと

建設機械や農業機械に使われるゴムクローラー(無限軌道)は、寿命を迎えると交換が必要な消耗品です。

しかし、重量があり、分別も困難なため、処分に手間とコストがかかります。その結果、一部の事業者によって「不法投棄」という重大な違法行為が行われている実態があります。

本記事では、実際に報告されたゴムクローラーの不法投棄事例を紹介するとともに、なぜ不法投棄が起きるのか、法的リスク、そして適正処理のためにどのような対策が必要なのかを詳しく解説します。

不法投棄

ゴムクローラーとは?処分が進まない理由

ゴムクローラーは重量物かつ複合素材

ゴムクローラーは、内部に金属ワイヤや芯金が埋め込まれており、単なる「ゴム製品」ではありません。
そのため、処分には「切断」「分別」「再資源化」の工程が必要であり、通常の廃プラスチック類とは異なる取り扱いが求められます。

正しく処分業者を選ばないと費用が高額となることがある

一般的なゴム製品と異なり、ゴムクローラーの処分費用は1本あたり数千円から1万円を超えるケースもあります。
これは処分業者によって価格がことなることは当然ですが、処分費だけ安く見えても収集運搬費や諸費用などの名目で合計金額は高額となることがあります。
処分費だけではく全体をみなければ排出者にとってコスト負担となり、不適切な処分を誘発する要因になってしまいます。

近年実際に報告された不法投棄の事例

茨城県小美玉市の事例

茨城県小美玉市では、複数回にわたり、ゴムクローラーが市道沿いや民有地に不法投棄されたことが市役所の公文書で確認されています。
廃材や生活ゴミと混在しているケースもあり、地域住民や行政にとって深刻な環境問題となりました。

【出典】小美玉市「不法投棄に関する報告書(PDF)」
https://www.city.omitama.lg.jp/manage/contents/upload/624d183c24bb8.pdf

不法投棄が発生する背景

処分業者が少ない

産業廃棄物としての取り扱いが必要であるにもかかわらず、ゴムクローラーに対応できる処分業者が限られており、特に地方では処分先が見つからないという声もあります。

広域での収集運搬業の許可を取得している産業廃棄物処分業者へ処分を依頼することがおすすめです。

処分費用が高額となることがある

ゴムクローラーは1本あたりや1kgあたりの処分単価を採用している産業廃棄物処分業者がほとんどです。そして収集運搬費用も必要となってきます。

自ら処分業者まで持ち込み、処分を依頼することも可能ですが、燃料費や自社の従業員が積み込みから運搬までする時間、手間を考えると収集運搬を依頼することが一般的です。

その収集運搬費用は車両のチャーターなので高額になることがあります。処分についての見積もりをとる際には処分単価だけでなく、収集運搬費用についても確認することが必要です。

以前の記事でも処分費用を少しでも安く抑えるためのポイントについて解説しておりますので、併せて確認してみてください。

中古市場での評価が低下

かつては一部で中古ゴムクローラーが流通していましたが、摩耗品であることや安全性の問題、以前と比較して安価なゴムクローラーが出てきたことから、近年では引き取り手が減少し、有価物としての取引は困難になっています。

中古ゴムクローラーの売却についての注意点や法的リスクについても解説しています。

法的リスク:不法投棄は重大な犯罪です

廃棄物処理法の違反

不法投棄は「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃掃法)」に基づき、厳しく処罰されます。

主な罰則(廃掃法第25条)

行為罰則内容
不法投棄5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金(法人は3億円以下の罰金)
両罰規定あり法人の役員も処罰対象になる場合があります
自社敷地内での投棄も違法

「敷地内だから問題ない」と誤解されがちですが、自己の管理地内においてもあまりにも長期間産業廃棄物を適切に処理せず放置することは、法的には「不法投棄」に該当する恐れがあります。

不法投棄を防ぐための対策

処分可能な業者の選定

「ゴムクローラー処分対応」「収集運搬可能」と明記している産業廃棄物処理業者を選びましょう。見積書を確認し、明細が不明瞭な場合は事前に質問することが重要です。また、見積もりは複数社から取得し相見積もりをすることも必要です。

ゴムクローラー購入時から処分費用までを考慮しておく

重機1台当たりのコスト計算のなかにゴムクローラー処分費用までを考慮しておくことが必要です。また、コスト算出の観点からゴムクローラー2本(1台分)の重量と処分費を教えてほしいなどといったリクエストにも応えてくれる業者を選ぶことも大切なことです。そういった細かい要望にも応えてくれる業者は不適正処理のリスクも低く、排出者責任の観点からも有効です。

マニフェストの活用

産業廃棄物処理を委託する際は、電子マニフェストや紙マニフェストで記録を残すことにより、行政指導があった際にも適正処理の証明が容易になります。

ゴムクローラー処分に関するQ&A

Q
自社で保管している古いクローラーはいつまでに処分すべき?
A

明確な期限はありませんが、「継続的保管」であっても目的なく置かれている場合は「不法投棄」とみなされるリスクがあります。また、長期間屋外に放置されることで自然発火による火災のリスクもあるためできるだけ早く処分先を確保しましょう。

Q
リサイクル可能なゴムクローラーはありますか?
A

産業廃棄物処分業者により回収されたゴムクローラーについては、加工が施された後に一般的に製鉄工場などに燃料として納品されリサイクルされます。これは「サーマルリサイクル」と呼ばれております。しかし一部の産業廃棄物処分業者では最終処分場に搬入され埋め立て処分とされることもあります。法律的にはゴム製品は「安定5品目」と呼ばれ、埋め立て処分が許されています。しかし、サーマルリサイクルとして資源として活用されることが推奨されるため、自身が処分を依頼している産業廃棄物処分業者がどのような処分を行っているのか確認してみましょう。

Q
海外に売ることはできますか?
A

一部の外国では中古機械部品として輸出される事例もありますが、ゴムクローラー単体では輸送コストと使用制限の観点から難しい場合が多いです。

まとめ:処分費を惜しむと高くつく

ゴムクローラーの不法投棄は、地域環境に深刻な影響を及ぼすだけでなく、法的なリスクも高く、企業の社会的信用を失う重大な問題です。
処分費を惜しんで違法行為に手を染めてしまっては高額な罰金が科されるだけでなく、商売に必要な許可の取り消しなどその影響は計り知れません。金額だけみれば高額に感じてしまうこともありますが、処分費用を惜しまず適正な処理ルートを選定し、信頼できる業者に依頼することが最も安全で合理的な選択肢です。

近年の環境問題への関心の高まりからも排出者自らが処分責任を果たす姿勢が特に求められています


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