建設機械や農業機械に使用される「ゴムクローラー」は、外見こそゴム製のように見えますが、その内部には「芯金(しんがね)」と呼ばれる鉄の骨格部品が組み込まれています。
この芯金は、ゴムクローラーの強度・耐久性・走行性能を大きく左右する極めて重要なパーツです。
しかし、ゴムクローラーの芯金にどのような鉄素材が使われているのか、またその素材が他にどんな製品で活用されているのかについてはあまり知られていません。
本記事では、普段と比べてマニアックな内容ですが、産業廃棄物としての処分やリサイクルを検討する方、建設・農業機械関連の整備・製造に関わる方に向けて、ゴムクローラーの芯金素材とその特性、そして他の用途での活用例を詳しく解説します。

そもそも「芯金」とは何か?
芯金とは、ゴムクローラーの内側に埋め込まれている鉄製の補強部品であり、走行装置とクローラーの噛み合わせや、トルク伝達を安定させる役割を果たします。
芯金はゴムクローラーのゴム部分に埋め込まれ、強固な糊で接着されており、簡単に構造が破綻しないような作りとなっております。
具体的には以下のような役割があります:
- ゴムクローラーの形状保持
- 駆動スプロケット(走行装置)との正確なかみ合わせ
- 高荷重への耐性
- 曲げやねじれに対する剛性の確保
そのため、芯金には「高い強度」「耐摩耗性」「一定の加工性」が求められ、選ばれる素材は非常に重要になります。
芯金に使われる鉄素材の種類と特徴
SS400(一般構造用圧延鋼材)
概要
SS400は、自動車や船舶部品などの一般的な構造部材として非常に広く使われている炭素鋼です。
コストが安く、溶接性や加工性にも優れているため、量産部品の素材として非常に人気があります。
SS材とはJIS規格「一般構造用圧延鋼材:JIS G 3101」に規定されている素材で、その後につく数字は素材ごとの特徴「基準」により異なります。
特徴
- 引張強さ:約400MPa
- 加工性・溶接性が良い
- 比較的安価で入手しやすい
ゴムクローラーへの適用理由
コストを抑えながらも、必要な最低限の強度と剛性を確保でき、加工が比較的容易であるため、大量生産品や小型機械用のクローラーに用の芯金として使用されることが多いです。
出典:シンニチ工業株式会社HP【SS400とは?SS材の特徴について解説】
S45C(機械構造用中炭素鋼)
概要
S45Cは中程度の炭素量を含む炭素鋼で、SS400よりも強度や硬度に優れています。
熱処理による性質変化が可能で、産業用の機械部品や高応力がかかる部材にも広く利用されています。
特徴
- 引張強さ:約570~750MPa(熱処理で強化可能)
- 熱処理による硬度向上が可能
- 耐摩耗性に優れる
ゴムクローラーへの適用理由
中・大型の建機に使用されるゴムクローラーでは、芯金に高強度・高剛性が必要となるため、炭素量が規定されているS45Cが選ばれるケースが増えています。炭素量がわかっているため、強度を出すために焼入れなどを行うことができます。そのため特に過酷な作業現場で使用される機械の部品に使用する素材として適しています。
出典:株式会社エースHP【材質S45Cとは?密度や硬さなど特徴や用途をまとめてご紹介】
SCM鋼(クロムモリブデン鋼などの合金鋼)
概要
SCM鋼とは、クロム(Cr)やモリブデン(Mo)を添加した合金鋼の総称で、耐熱性や耐摩耗性に優れている高機能鋼です。SCM435やSCM440が代表例です。
特徴
- 非常に高い強度・靭性
- 焼入れ処理で硬化可能
- 高荷重・高応力に耐える
ゴムクローラーへの適用理由
長寿命・高性能なクローラーを求める特定用途(鉱山機械、特殊車両等)では、SCM鋼が使用される場合もあります。価格は高めですが、耐久性重視の現場に向いています。
出典:メタルスピードHP【クロムモリブデン鋼(SCM材)】
ゴムクローラー芯金素材の他用途とは?
ここでは、前述の素材(SS400/S45C/SCM鋼)がゴムクローラー以外にどのような製品に使われているのかを分野別に紹介します。
建築・土木分野
素材 | 使用製品 |
---|---|
SS400 | 建物の骨組み、鉄骨柱、梁、橋梁部材など |
S45C | クレーン部品、足場機構、強度が必要な枠材 |
SCM鋼 | 高応力がかかる橋梁ピン、耐候性部材 |
機械・自動車部品分野
素材 | 使用製品 |
---|---|
SS400 | 機械カバー、架台、軽負荷部品 |
S45C | ギア、シャフト、カム、ベアリングレース、クランク部品 |
SCM鋼 | ミッションギア、エンジン部品、ドライブシャフト |
農業・建設機械分野
素材 | 使用製品 |
---|---|
SS400 | トラクターのシャーシ、外装パーツ |
S45C | 建機アーム部、油圧シリンダーピン、リンク部品 |
SCM鋼 | ロータリー刃軸、高耐久ベアリング軸受け部 |
高機能・精密機械分野
素材 | 使用製品 |
---|---|
S45C | 測定機器の構造部、位置決め用シャフト |
SCM鋼 | ロボットアーム関節、高速回転軸、航空機構造部材 |
まとめ:芯金素材の理解は製造・リサイクルの鍵
芯金素材の分離と処理方法
- SS400・S45Cなどの炭素鋼は、鉄スクラップとしてリサイクル可能です。
- SCM鋼などの合金鋼は成分分析を要することがあるため、一般的なスクラップより扱いが難しい場合もあります。リサイクル業者へ一度相談してみることをお勧めいたします。
廃棄時の注意点
芯金付きゴムクローラーは「混合廃棄物(廃プラスチック類+金属くず)」として扱われます。
ゴムクローラーの芯金には、SS400・S45C・SCM鋼といった高機能な鉄素材が使われており、それぞれが持つ特徴によって「コスト」「強度」「耐久性」が左右されます。
また、これらの素材は建築、機械、自動車、精密機械など幅広い業界でも活用されており、再資源化の観点からも重要な鉄資源です。
廃棄やリサイクルを検討する際にも、素材に応じた処理方法の理解が不可欠です。特に産業廃棄物処理の現場においては、混合廃棄物としての取り扱いや素材別の再利用価値に注目することで、廃棄物処理費用の削減や適切な見積もり、処理を選ぶことができます。是非一度リサイクルの観点から廃棄方法について見直してみてはいかがでしょうか。
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