私たちの日常生活や事業活動の裏側で、さまざまな廃棄物が生まれています。その中でも、工場や建設現場などから排出される『産業廃棄物』は、適切に処理しなければ環境に深刻な影響を与える可能性があります。
この重要な役割を担っているのが、産業廃棄物処分業者です。
では、業者は実際にどのような仕事をしているのでしょうか?
この記事では、産業廃棄物処分業者の仕事内容や、許可取得までの流れについてわかりやすく解説します。
産業廃棄物処分で環境負担を減少させる
資源の分別・加工を通じて再利用を促進し、環境負荷を軽減します
お客様からお預かりした産業廃棄物には、そのまま資源として再利用できるものや、加工を施すことで新たな資源として生まれ変わるものがあります。
以下は産業廃棄物の排出量がどのような割合で再利用に回され、また最終処分されているかを示しています。
たとえば、産業廃棄物のうち約20%はそのまま再利用され、さらに中間処理を施すことで約33%が新たな資源となり、合計約53%が再資源として再利用されています。
このように、処分業者は限りある資源を有効活用し、最終的な埋め立て処分を最小限に抑える重要な役割を担っています。
では、実際にどのような工程を経て廃棄物が再資源化されるのか、具体的に見ていきましょう。
産業廃棄物処分には「中間処理」と「最終処分」の2種類がある
中間処理場で分別・加工・減容化を行い、それでも再資源化できないものは最終処分へ
産業廃棄物処分の工程は、大きく分けて「中間処理」と「最終処分」の2種類があります。
中間処理では、再利用可能な廃棄物を分別・加工・減容化し、可能な限り再資源化を目指します。
一方、再資源化が困難なものは最終処分場で埋め立てなどの処理が行われます。
今回は、上記画像の「ゴムクローラー」を例にとり、中間処理から最終処分までの具体的な流れを見てみましょう。
上記の図にあるように、中間処理では主に「切断」や「破砕」の工程が行われます。これらの工程を通じて、廃棄物を再利用可能な形に加工します。
切断工程
切断工程では、大型の切断機を使用して廃棄物を処理します。
特にゴムクローラーのような廃棄物は、過酷な環境での使用を前提に作られているため、非常に頑丈に設計されています。そのため、専用の高性能な切断機で細かく裁断されます。
再資源化の流れ
裁断されたキャタピラやタイヤなどのゴム製品は、製鉄工場などに出荷され、次の役割を果たします。
- ゴム部分:化石燃料の代替として燃料化されます。
- 金属部分:鉄製品の原料としてリサイクルされ、新たな製品へと生まれ変わります。
このように、中間処理は廃棄物の可能性を最大限引き出すための重要なプロセスです。再利用を通じて、環境負荷の軽減に貢献しています。
産業廃棄物処分業の許可申請から取得までの流れ
書類準備から許可申請まで、法的基準をクリアする必要がある
産業廃棄物処分業を始めるためには、原則として施設を設置する都道府県知事に対して許可を申請する必要があります。
ただし、許可を取得するためには、都道府県だけでなく関係する市町村との協議も必要です。この過程では、多くの法的基準をクリアしなければなりません。
また、場所によっては近隣住民に対して十分な説明を行う必要もあり、しっかりと時間をかける必要があります。
特に新規で許可を取得する場合、専門知識が必要なため、行政書士や専門家のサポートを受けながら手続きを進めることをおすすめします。
以下に千葉県の手続フローを参考として示します。
出典:(千葉県)産業廃棄物処理業許可証交付に係る手続フロー
必要書類の例:千葉県の場合
千葉県で産業廃棄物処分業の許可を申請する際に必要な書類は以下の通りです。
- 産業廃棄物(特別管理産業廃棄物)処理業許可申請書
- 事業計画の概要を記載した書類、処理工程図、事業計画書
- 事業のように供する施設(保管の場所を含む)の構造を明らかにする平面図、立面図、断面図、構造図及び設計計算書
- 当該施設付近の見取図(縮尺25,000分の1以上の地図)
- 排水施設の図面及び排水経路図
- 土地及び施設の所有権(所有権を有しない場合、使用権原)を有することを証する書類
- 公図、土地の登記事項証明書
- 土地及び施設の賃貸借契約書又は所有者の同意書(所有権を有しない場合)
- 誓約書
- 処分後の産業廃棄物の処理方法を記載した書類
- 当該事業を行うに足りる技術的能力を証明する書類
- 産業廃棄物(特別管理産業廃棄物)処分に関する講習の終了証の写し
- 技術管理者講習を修了した有資格者の記載及び修了証の写し(法15条施設を設置する場合)
- 事業の開始に要する資金の総額及びその資金の調達方法を記載した書類
- 申請者が法人の場合:(直近3年)貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表、法人税の納税証明書、直前の県税完納証明、事業収支計画書
- 申請者が個人の場合:資産に関する調書、直前3年の所得税の納税証明書、直前の県税完納証明、事業収支計画書
- 申請者が法人の場合:定款又は寄付行為、会社の登記事項証明書(履歴事項全部証明書)
- 申請書第2、3面に記載されている法人又は個人に対する以下の書類 法人:会社の登記事項証明書(履歴事項全部証明書) 個人:住民票(本籍地記載あり、外国人の方は外国人登録済証明書の写し) 登記されていないことの証明書
- 取得許可確認書、現許可証の写し
このように、産業廃棄物処分業の許可取得には多くの書類が必要で、手続きも複雑です。
そのため、許可申請を得意分野とする行政書士事務所など、専門家の支援を活用することを強くお勧めします。専門家に相談することで、手続きがスムーズに進むだけでなく、申請の不備や遅延を防ぐことができます。
許可取得までの注意点
産業廃棄物処分業の許可申請は、非常に多くの手続きが求められるため、時間がかかる場合があります。書類だけではなく現地での検査なども行われ、すべての基準を満たした場合に初めて許可がおり、事業を開始することが可能になります。
また、許可取得後も以下の義務があります。
- 毎年の実績報告
- 許可の定期更新申請
- マニフェストの適正運用
これらの厳しい基準と手続きを設けることで、行政は産業廃棄物処分業が適正に運営されるよう管理しています。
まとめ
この記事では、産業廃棄物処分業の役割や業務内容、許可取得の流れについて解説しました。以下にポイントを振り返ります。
<産業廃棄物処分業の役割>
- 産業廃棄物処分業には「中間処理業」と「最終処分業」の2つの種類があります。
- 中間処理業では、廃棄物を選別・加工し、再資源化を図ることで最終処分される廃棄物の量を大幅に削減しています。
<中間処理の具体例>
- 中間処理には特殊な切断機や破砕機を使用し、頑丈な廃棄物を小さく加工します。
- 加工後の素材は、製鉄工場の焼却炉の燃料や鉄製品の原料として再利用され、資源循環を支えています。
<許可取得とその後の重要性>
- 産業廃棄物処分業を始めるには、法的基準を満たすための複雑な手続きが必要です。
- 許可取得後も定期的な更新や報告、マニフェスト適正運用など、厳しいルールを守りながら運営を続ける必要があります。
産業廃棄物処分業は、環境負担を軽減し、持続可能な社会の実現に貢献する重要な仕事です。
一方で、許可取得には多くの準備が求められるため、専門家の支援を活用することをお勧めします。
廃棄物処分を通じて環境と社会に貢献できるこの分野に、ぜひ挑戦してみてください。
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