事業活動によって排出される産業廃棄物を適切に管理することは、環境保全の観点から非常に重要です。
その管理を徹底するために導入されているのが「マニフェスト(産業廃棄物管理票)」と呼ばれる仕組みです。
マニフェストは、廃棄物の排出から最終処分に至るまでの流れを記録・追跡するためのツールであり、事業者の法的責任を明確にする重要な役割を果たします。
この記事では、マニフェストの目的や種類、運用方法、さらに違反した場合の罰則規定についてわかりやすく解説していきます。
産業廃棄物の適正管理に欠かせないマニフェストの基本を押さえて、法令順守やリスク回避に役立てましょう。
マニフェストを作る目的とは
不法投棄を防ぎ、責任の所在を明確にすること
マニフェストとは「産業廃棄物管理票」のことで、産業廃棄物が適正に処分されているかを確認するための書類です。
この書類は、「排出事業者」「収集運搬業者」「処分業者」の三者間でやり取りされ、排出事業者が作成することが義務付けられています。
マニフェスト制度が導入された背景には、日本が高度経済成長期に直面した深刻な産業廃棄物問題があります。この時期に不法投棄が横行し、環境汚染や住民への健康被害など、社会問題にまで発展しました。
こうした事態に対応するため、政府は廃棄物の処分状況を確認し、不法投棄を防止する仕組みとしてマニフェストを導入しました。
1990年に任意運用として開始されたマニフェスト制度は、1998年にすべての産業廃棄物に対して交付が義務化されました。それ以来、責任の所在を明確にし、適正処分を徹底するための重要な役割を担っています。
マニフェストの運用について
産業廃棄物の適正処理には、マニフェストの正確な運用が欠かせません。適切に管理することで、法令順守はもちろん、不法投棄や環境汚染のリスクを防ぐことができます。
以下では、マニフェストの保存義務について解説します。
マニフェストは5年保存が義務
マニフェストには、法律で定められた保存義務があります。排出事業者や収集運搬業者、処分業者は、それぞれが交付されたマニフェストを5年間保管しなければなりません。この保存期間中、必要に応じて監査や確認が行われることがあります。
保存方法には、従来の「紙マニフェスト」による保存と、近年普及が進んでいる「電子マニフェスト」による保存があります。次の項目では、マニフェストの種類や保存方法について詳しく見ていきましょう。
事業系マニフェストには紙と電子の2種類がある
マニフェストはいくつかの種類がありますが、大きく分けると以下の3種類です。
- 事業系マニフェスト
- 建設系廃棄物マニフェスト
- 積替保管用マニフェスト
この記事では『①事業系マニフェスト』について解説します。
事業系マニフェストは「紙マニフェスト」と「電子マニフェスト」の2種類があり、どちらを用いるかは排出事業者が自由に選択できます。それぞれにメリットがありますが、近年では電子マニフェストの利用が増加しています。
紙マニフェスト:複写式で管理する基本ツール
紙マニフェストは、産業廃棄物の管理を記録するための7枚綴りの複写式書類です。廃棄物の種類や関係者を可視化し、適正処理を証明する役割を果たします。
<紙マニフェストの流れと仕組み>
- 排出事業者の作成と確認
廃棄物を排出する際、排出事業者が紙マニフェストを作成します。
記載内容は収集運搬業者に手渡す前に確認され、廃棄物の内容と記載内容に相違がないことを確かめます。その後、収集運搬業者が必要事項を記載します。 - 複写式の配布
● A票: 排出事業者が手元に保管します。
● B1~E票: 残りの6枚が収集運搬業者に渡されます。 - 処分の進捗に応じた返送
廃棄物が処分場に到着すると、B2票が収集運搬業者から排出事業者へ返送されます。
処分が完了すると、D票とE票が処分業者から排出事業者へ返送されます。 - 最終的な保管
排出事業者は、A票、B2票、D票、E票の計4枚を手元に残し、法律に基づき5年間保存する必要があります。
【出典】:マニフェストの購入|マニフェスト|処理企業の方へ|公益社団法人 全国産業資源循環連合会
なお、紙マニフェストは「公益社団法人 全国産業資源循環連合会」の各都道府県協会にて購入することができます。
【参照】:正会員リスト|連合会の概要|連合会のご案内|公益社団法人 全国産業資源循環連合会
電子マニフェスト:業務効率化を推進
電子マニフェストは、サーバーを活用した効率的な管理方法です。排出事業者、収集運搬業者、処分業者がサーバー上で情報を入力・共有することで、紙マニフェストで発生する煩雑な事務作業を削減できます。
書類の紛失リスクがなく、保存も自動的に行われるため、法令順守をより確実に実現できます。
電子マニフェストの登録は、「日本産業廃棄物処理振興センター 情報処理センター」で行います。
同センターでは、登録方法や操作方法を分かりやすくまとめた資料も提供されていますので、導入時の参考にすると便利です。
【参照】:公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センター
【参照】:操作マニュアル | 説明会・マニュアル | 電子マニフェスト
電子マニフェスト導入がおすすめ
電子マニフェストは、紙マニフェストに比べて多くの利点があります。
まず、登録手続きが簡単で、保存や管理が電子サーバー上で行われるため、必要なときにすぐに処分状況を確認できるのが特徴です。また、紙マニフェストでは郵送によるやりとりが必要なため、時間やコストがかかりますが、電子マニフェストならその手間が省けます。
さらに、電子マニフェストの導入は環境への配慮にもつながります。
紙を使用しないため、CO2排出の削減に寄与し、環境保護に貢献できます。これにより、排出事業者は企業イメージの向上を図ることも可能です。環境意識の高い現代では、こうした取り組みが顧客や取引先からの評価につながるケースも増えています。
産業廃棄物を処分する際には、利便性や環境面でのメリットを考慮し、電子マニフェストの導入をぜひ検討してみてください。
法令違反がもたらすリスク:罰則規定とは
産業廃棄物の適正処理は法令で厳しく管理されています。
この規定を違反すると、企業や担当者に大きな責任が生じ、社会的信用を失うだけでなく、重い処分が科される場合もあります。
以下では、罰則規定の内容について詳しく解説します。
法律に違反した際には刑事処分が課されます
産業廃棄物処理法(廃棄物処理法)に基づき、不適正な処理や法令違反が発覚した場合、以下の2種類の処分が課される可能性があります。
- 措置命令
都道府県知事や政令市の長から発令される命令です。不適正な処理が行われた場合、違反者に対して速やかに適切な措置を講じるよう求められます。例えば、不法投棄された廃棄物の撤去や環境修復などが命じられるケースがあります。 - 刑事処分
措置命令に従わない場合や、重大な違反があった場合には、刑事処分が科されます。具体的には以下のような罰則があります。- 懲役刑:最大5年以下の懲役。
- 罰金刑:最大1,000万円以下の罰金(法人の場合はさらに高額になる可能性があります)。
まとめ:適正なマニフェスト運用が企業の未来を守る
産業廃棄物の適正処理を確保するために導入されたマニフェスト制度は、環境保護のためだけでなく、企業の信頼性を支える重要な仕組みです。
本記事ではマニフェスト制度について以下のことを解説しました。
- マニフェストの目的と重要性
不法投棄を防ぎ、廃棄物処理の責任の所在を明確にすることが、マニフェスト運用の核心です。 - 紙と電子マニフェストの特徴
それぞれにメリット・デメリットがあるものの、業務効率や環境負荷削減の観点から、電子マニフェストの導入が推奨されています。 - 法令違反のリスクと罰則
適正な処理を怠ると、措置命令や刑事処分といった厳しい罰則が科されるだけでなく、社会的信用も失いかねません。
持続可能な社会のために
廃棄物処理は、企業活動の中で避けられない課題です。しかし、適正な処理を徹底することで、環境保護に貢献し、持続可能な社会を築く一助となります。
マニフェスト制度は単なる法律遵守のツールではなく、企業が社会と共存するための重要なステップです。 今後も適切な運用を心がけ、より良い未来を目指しましょう。
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詳しくは以下をご参照ください。
【参照】 (ご契約までの流れ):株式会社オーシャン 廃ゴムクローラー・廃タイヤ中間処理部門