
みなさんの身近にある建設現場や農業の現場は様々な機械が使われています。中でもショベルカーなどは一般的に「キャタピラ」や「ゴムクローラー」などといわれるパーツがあります。
正式には「無限軌道式トラクター」や「履帯」と言います。
ちなみに「キャタピラ」とはキャタピラー社の製品名であり、製品が広く普及したため一般的に使われることが多くなりました。
実はショベルカーなどの重機を購入する際にその大きさによっては鉄のキャタピラが標準装備となっていることがあり、「ゴムクローラー」や「ゴムパッド」を選択することもできるようになっている場合があります。一見とても似ているこれらの部品ですが、構造・用途・耐久性・コストなどに大きな違いがあります。
本記事では、これらの違いを写真などを交えてわかりやすく解説し、産業廃棄物としての処分方法についても詳しくご紹介します。
ぜひ最後まで記事を読み、今までより一層理解を深めましょう!
ゴムパッドとは路面を傷つけないためのゴム製の保護パッド

ゴムパッドとは、鉄製クローラー(履帯)の履板に取り付けるゴム製のパッドのことです。
道路や舗装面を傷つけないようにしたり、移動時の騒音軽減などが期待でき、鉄製のリンクプレートにボルトなどで取り付けられる構造になっています。
ゴムパッドは片側留めと両側留めの2種類があり、取り付ける際に使用者で選択できるようになっています。
鉄製クローラーを装着している重機で使用する状況によって鉄製クローラーのまま使用したり、ゴムパッドを装着したりと選択できるため、重機を広い用途で活用することができます。

出典:東日興産株式会社HP
主な使用用途
- 市街地での舗装路走行
- 建築現場での建機の仮設作業
- 資材置き場や住宅街での重機を使用した作業
- アスファルトやコンクリート上での作業
ゴムパッドを使用するメリット
路面へのダメージ低減
- アスファルト・コンクリート路面での作業に最適
- 鉄のキャタピラだと路面を傷つけますが、ゴムパッドを装着することでダメージを大幅に軽減できます。路面保護や騒音配慮を求められる舗装工事・都市土木・住宅街での作業に向いています。
振動・騒音の低減
- 鉄キャタに比べてゴム製のため振動や騒音が大きく減少します。
- 街・市街地・工場構内など騒音に配慮が必要な現場で有効です。
作業機・オペレーターへの負荷低減
- 部品の消耗抑制や疲労軽減
- 振動が少ないため、機械本体の負荷やオペレーターの疲労も軽減することが期待されます。
走行性能の向上
- 舗装路走行での安定性向上
- 使用する現場によっては機械を車両に積み替えずに現場間を自走移動できることもあります(行動走行は法規制を要確認)。
交換・整備が比較的容易
- メーカーや使用頻度により当然摩耗する状況は変化します。鉄製クローラーにボルト固定しているので交換作業は専門業者により短期間で実施されることがほとんどです。
- 消耗などで傷んだ部分のゴムパッドのみ交換することも可能なので、整備の規模が小規模で済むことが多いです。
デメリット
- 耐久性は鉄キャタに比べやや劣る(交換頻度が高くなる傾向にある。)
- 重負荷・岩場・ぬかるみでは消耗が早まる
- 重機1台分のゴムパッド購入価格がゴムクローラーより高い場合もある
メリットとデメリットをまとめると以下になります。
メリット | デメリット |
---|---|
交換が簡単で費用が安い | 摩耗が早く、寿命が短い |
鉄クローラーに追加装着可能 | 金属とゴムが強く癒着しているためリサイクル業者から回収を断られる場合がある |
舗装面を傷つけない | 取付作業が手間になる場合がある |
ゴムクローラーとは一体成型の「ベルト状履帯」

ゴムクローラーは、ゴムとビードワイヤーや芯金などを組み合わせた一体成型の「ベルト状履帯」です。
ゴムパッドとは異なり、表面はすべてゴムで覆われた構造をしています。
ゴムクローラーの内部にあるスチールコードはゴムクローラーの張性を保つために必要であり、芯金は「スプロケット」という重機本体についている歯車のようなパーツに嚙み合うようになっており、スプロケットなどが回転することにより前後に進むことができるのです。
ゴムクローラーは過酷な使用環境で重機を支えるため強度と柔軟性の両立が必要なのです。
主な使用用途
- 不整地やぬかるみの多い建設現場
- 農地や田畑などの走行
- 小型ショベル、コンバイン、トラクターなど
ゴムクローラーを使用するメリット・デメリット
メリット・デメリットに関しては基本的にゴムパッドと同じですが、費用面などで差が出てきます。
ゴムパッドとゴムクローラーの違いを比較
項目 | ゴムパッド | ゴムクローラー |
---|---|---|
装着方式 | 鉄クローラーに後付け | 車体下部に一体装着 |
構造 | ゴム+金属パーツ | ゴム+スチールワイヤー成型 |
主な使用環境 | 舗装路・仮設現場 | 未舗装地・農地 |
メンテナンス | パッド単位で交換 | 全体交換が必要 |
寿命 | 短い(摩耗しやすい) | 長い(構造が頑丈) |
購入費用 | 安い(枚数による) | メーカーにより差がある |
産業廃棄物の区分と処分する際の注意点
ゴムパッドとゴムクローラーは産業廃棄物の区分は同じ
廃棄対象 | 区分 |
---|---|
ゴムパッド(金属付き) | 廃プラスチック類及び金属くず |
ゴムクローラー(合成ゴム+ワイヤー) | 廃プラスチック類及び金属くず |
ゴムパッド及びゴムクローラーともに素材としてはゴムと金属のため、産業廃棄物の区分は同じで「廃プラスチック類及び金属くず」となります。
「廃プラスチック類」及び「金属くず」の区分で産業廃棄物処分業の許可を取得している産業廃棄物処分業者へ処分を委託する必要があります。
注意点:自己焼却での処理は法律違反
- 焼却処理は禁止:自己焼却は廃棄物処理法違反になります。
- マニフェストの記載:廃プラスチック類及び金属くずの区分にチェックが必要です
ゴムパッド・ゴムクローラーの再資源化と今後の展望
近年ではゴム製廃棄物のリサイクル技術も進んでおりますが、ゴムクローラーやゴムパッドは処理が困難で知られており、処分を行うことができる産業廃棄物処分業者も限られています。
切断や破砕などの処理工程を経て製紙工場や製鉄工場などに助燃材(燃料がより高いエネルギーで燃えるための手助けをするもの)として再利用されるケースも増えています。
製鉄工場では燃え残りの金属を次の製品の原料とするなど再利用が行われているケースもあります。
今後は以下のような方向性が期待されます。
- 製品設計段階からリサイクルを考慮した素材開発
- 分別しやすい構造の導入
- 今よりさらに強い意識をもって業界全体でのリユース・リサイクル部門を推進する
まとめ
ゴムパッドとゴムクローラーの違いをまとめると以下になります。
見出し | ポイント |
---|---|
ゴムパッド | 鉄クローラーに装着する部品。取り替えが容易。 |
ゴムクローラー | ベルト状の一体成型部品。高耐久だがゴムパッドより費用が割高の傾向。 |
処分区分 | 廃プラスチック類及び金属くず |
処理方法 | 専門業者による切断・破砕などの工程を経て製紙工場や製鉄工場で助燃材として利用 |
また、ゴムパッドやゴムクローラーの廃棄は、必ず適切な産業廃棄物処理業者に依頼することが必要です。
ゴムクローラーを適切にリサイクルできる業者も限られているため、やみくもに産業廃棄物処分業者へ依頼するのではなく、きちんとした技術をもつ産業廃棄物処分業者へ処分を委託することが求められています。
無許可の焼却や不法投棄は、排出事業者にも重い責任が課せられます。
排出事業者の皆様も役割を終えたゴムパッドやゴムクローラーをきちんと資源化していることを企業として公表することで顧客からのイメージも向上し、他社との差別化につながります。
使用後のゴムパッドやゴムクローラーがどのようにリサイクルされるかまで関心を持つことで、地球環境へも目を配れる環境にやさしい企業を一緒に目指しましょう。
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