ゴムクローラーは燃やしてもいいの?違法性・環境リスク・適正処理方法を徹底解説

建設機械や農業機械で使用されるゴムクローラー、摩耗や破損によって交換が必要となった際、「これって自分の会社の敷地内で燃やせるのでは?」と考える方もいるかもしれません。
しかし、ゴムクローラーを自己判断で燃やすことは厳格に禁止されており、重大な法令違反につながります。

本記事では、ゴムクローラーの性質や、なぜ燃やしてはいけないのか、法律・環境・火災リスク、さらには産業廃棄物としての適正処理の方法まで詳しく解説します。

ゴムクローラーとは?構造と廃棄物分類を知ろう

ゴムクローラーは、ショベルカーやミニバックホーなどの建設機械、または農業用トラクターなどに装着される「無限軌道(クローラー)」の一種で、金属とゴムを複合させた特殊な構造をしています。

内部には芯金と補強のための金属芯(スチールコード)が埋め込まれ、外装には合成ゴムを圧着するための強力な糊が使われています。
この構造により、頑丈かつ高い耐久性を実現している反面、廃棄の際には特殊な構造ゆえに金属部分と合成ゴムに分離することが大変で、産業廃棄物処分業者は各業者が工夫しながら特殊な機械を使ったり、独自の処理を行ったりしております。

廃棄する際の分類としては、事業活動により排出されるため「産業廃棄物」に該当し、家庭用の可燃ゴミや粗大ゴミとして処分することはできません

また、産業廃棄物の分類では「廃プラスチック類」に分類され、「廃プラスチック類」の許可を得ている産業廃棄物処分業者へ処分を委託しなければなりません。

以下の記事を併せて読むとより理解が深まります。

ゴムクローラーを燃やしてはいけない理由

法律上の禁止行為である

「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)」では、廃棄物をみだりに焼却することは原則禁止されています。

例外として焼却が許可されているのは、国または地方自治体が設置する焼却施設や、許可を受けた廃棄物処分業者の施設のみです。
次に法律関係の整理をしてみましょう。

廃棄物の処理及び清掃に関する法律

(焼却禁止)

第16条の2 何人も、次に掲げる方法による場合を除き、廃棄物を焼却してはならない。

一 一般廃棄物処理基準、特別管理一般廃棄物処理基準、産業廃棄物処理基準又は特別管理産業廃棄物処理基準に従って行う廃棄物の焼却

二 他の法令又はこれに基づく処分により行う廃棄物の焼却

三 公益上若しくは社会の慣習上やむを得ない廃棄物の焼却又は周辺地域の生活環境に与える影響が軽微である廃棄物の焼却として政令で定めるもの

【出典】廃棄物の処理及び清掃に関する法律(e-Gov法令検索)

このように原則として自身で廃棄物を焼却処分することは法律で規制されています。
一部以下のような例外は規定されていますがゴムクローラーに例外規定はなく、必ず産業廃棄物として産業廃棄物処分業者へ処分委託することが必要となります。

廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令

(焼却禁止の例外となる廃棄物の焼却)

第14条 法第16条の2第3号の政令で定める廃棄物の焼却は、次のとおりとする。

条文
一 国又は地方公共団体がその施設の管理を行うために必要な廃棄物の焼却河川管理者が行う伐採した草木の焼却(ボランティアによるものも含む)
二 震災、風水害、火災、凍霜害その他の災害の予防、応急対策又は復旧のために必要な廃棄物の焼却凍霜害防止のための稲わらの焼却(廃タイヤの焼却は禁止)
三 風俗慣習上又は宗教上の行事を行うために必要な廃棄物の焼却どんど焼きなどの地域行事における廃材等の焼却
四 農業、林業又は漁業を営むためにやむを得ないものとして行われる廃棄物の焼却農業者が畑で行う剪定枝の焼却(農業用ビニールの焼却は禁止)
五 たき火その他日常生活を営む上で通常行われる廃棄物の焼却であって軽微なものたき火、キャンプファイヤーにおける廃材等の焼却

【出典】廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(e-Gov法令検索)

焼却設備の基準

また、昔から事業所内に焼却炉を設置して慣習的に焼却を行ってきた業者様もあろうかと思います。実は焼却炉の設備に関しても平成14年12月1日から厳しくなっています。

以下の構造を全て満たす必要がある

  1. 空気取入口及び煙突の先端以外に焼却設備内と外気とが接することなく、燃焼室において発生するガス(以下「燃焼ガス」という。)の温度が摂氏800度以上の状態で廃棄物を焼却できるものであること。
  2. 燃焼に必要な量の空気の通風が行われるものであること。
  3. 外気と遮断された状態で、定量ずつ廃棄物を燃焼室に投入することができるものであること(ガス化燃焼方式その他の構造上やむを得ないと認められる焼却設備の場合を除く。)。
  4. 燃焼室中の燃焼ガスの温度を測定するための装置が設けられていること。
  5. 燃焼ガスの温度を保つために必要な助燃装置が設けられていること。
    (廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則第1条の7)

注意点

この規定は小型の焼却炉を含む全ての焼却設備に適用されます。(自己の事業所内の廃棄物を焼却する場合や家庭用の焼却炉も対象となります。)

これらの基準を満たさない焼却炉(例:ドラム缶や一斗缶を利用したもの)は、規模に関係なく使用が禁止されています。

もし、個人や企業がゴムクローラーを野焼きしたり、簡易炉などで焼却すれば、5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金(法人は最大3億円)が科される可能性があります。

燃焼時に有害ガスが発生するリスク

ゴムクローラーに使用される合成ゴムや金属には、以下のような化学物質を含みます

  • 加硫剤(硫黄など)
  • カーボンブラック
  • 可塑剤・安定剤
  • 金属補強材(スチールコード)

これらを不完全燃焼させると、ダイオキシン類や塩素系化合物、窒素酸化物などの有害物質が発生する恐れがあります。
これらは大気汚染や地球温暖化の原因となるだけでなく、人体にも有害で、特に呼吸器系に作用することが知られており、発がん性が指摘されている物質です。不完全燃焼により有害なガスを発生させないために高い温度帯を保ちながらの焼却が必要であることから、焼却炉の設備基準が決められているのです。

そのため、焼却温度が不十分な簡易炉などでは、ゴムが不完全燃焼となり、有害なガスや悪臭、黒煙を出してしまうため、焼却が制限されているのです。

火災や爆発事故の危険性

ゴムクローラーの焼却に伴う実際の火災事故も報告されています。例えば、使用済みゴムクローラーを金属ごみと一緒にスクラップ処理しようとした際、残留油や加硫ガスが発火して爆発的に炎上した事例があります。

これにより工場が全焼し、周辺住民にも避難指示が出されるなど、企業としての社会的責任も大きく問われました。

また、一度火がついたゴムは燃焼カロリーがとても高いため、消火することが難しく、燃え広がってしまうことが多いのです。

正しい処理方法とは?産業廃棄物処分の流れ

産業廃棄物収集・処分業者へ処分を依頼するのが鉄則

ステップ1:自社運搬、または産業廃棄物収集運搬業者に回収を依頼

まずは、産業廃棄物収集運搬業の許可を持つ業者に回収を、産業廃棄物処分業許可を持つ業者へ処分を依頼します。ゴムクローラーは大型かつ重量物であるため、専門的な積載・固定技術が求められます。

自社で排出した廃棄物を産業廃棄物処理施設に自社の車両で運搬することは法令違反ではありません。しかし自社の車両で処分業者へ運搬する場合は特に注意が必要です。
それを「自社運搬」といいますが、自社運搬にもルールが決められており、逸脱すると法令違反となり罰則の適応となってしまいます。
また、ゴムクローラーは特に重量があり、大型であるため、積載にもノウハウが必要です。積載方法が不十分であり運搬中に事故を起こしてしまった際には人命危険があるだけでなく、企業に大きなリスクをもたらします。
そのリスクを減らすためにもノウハウを持った収集運搬業者へ運搬を委託することが良い選択です。

【自社運搬時に遵守すべき主な基準】
分類内容
運搬車両の基準飛散・流出・悪臭が生じないような構造の車両または密閉容器
・廃棄物の種類に適した構造(液体なら防液槽付きなど)
車両に「産業廃棄物収集運搬中」と明示(ステッカーやマグネット等)
保管・積載方法過積載禁止(車両の最大積載量以内)
飛散・漏洩を防止するための適切な容器や梱包
・積載のバランスを保ち、走行中の転倒・崩落を防ぐ
マニフェスト関連産業廃棄物排出者はマニフェスト交付が必須
・マニフェストの記載ミス・保管義務(5年間)にも注意
処分先との連携受け入れ先処分業者が適正な許可を持っていることの確認
・受入拒否されることがないよう、事前に受入基準を確認

【自社運搬車に必要な標示内容(ステッカー)】
項目内容
表示文言「産業廃棄物収集運搬車」または「産業廃棄物運搬中」など
(「産業廃棄物収集運搬車」が一般的です)
表示位置車両の両側面後部に明確に見えるように表示
表示の大きさ明確な寸法指定はないが、走行中でも読み取れる大きさ・視認性が必要(一般的に文字高さ10cm以上)
表示方法・マグネットシート(脱着式)
・ステッカー(貼付式)
・プレート(取り付け式)など
※水濡れや破損で読めなくなることのない素材が推奨されます
※弊社ではマグネット式とステッカー式を併用しています。
表示の言語日本語で表記(法的には他言語不要)

上記のように自社運搬についても法律で細かく規定がなされており、事前に法令違反にならないよう入念に準備する必要があります。

このように自社運搬には様々なハードルを越える必要もあるため、積み込みにかかる時間や運搬する時間等を勘案しても結果的に、収集運搬業者へ回収を依頼することが費用を削減することに繋がるのです。

ステップ2:産業廃棄物処分業者へ廃棄物を引き渡した際は、適切なマニフェスト管理が必要

産業廃棄物処分業者へ無事に廃棄物が渡ったら、各種処理工程を経て再資源化できるものは再資源化し、それができなかったものは最終的に埋め立て処分などとなります。

処理の全工程は「産業廃棄物管理票(マニフェスト)」で管理され、現在自分が排出した廃棄物はどこでどのような過程を経て処分されているかが分かります。排出事業者は排出したら責任が終わるわけではなく、最終処分が完了までの責任を負う義務があります。

また、最終処分が完了した旨のマニフェストを産業廃棄物処分業者から受けっとたら、5年間の保存が義務付けられていますので、必ず保管しましょう。

マニフェストについて以下の記事を読んで復習をするとより深い理解につながります。

まとめ|ゴムクローラーは絶対に燃やさず、適正処理を

ゴムクローラーは、自分で燃やして処分することができない産業廃棄物です。焼却すれば、有害ガスの発生、法令違反、火災リスクなど、多くの問題を引き起こします。

適正処理のポイント:

  • 必ず許可を受けた産業廃棄物処分業者に委託する
  • マニフェストで処理過程を適切に管理する
  • コストや処理先に不安があれば専門業者に相談する

産業廃棄物処理において重要なのは、排出事業者責任の原則です。これは、処理を業者に委託しても、最終処分が完了するまで責任を持たなければならないのです。

もし委託先業者が不適正処理をしていた場合でも、排出事業者側に行政指導・罰則が課されるケースもあります。したがって、許可業者の選定とマニフェスト管理が極めて重要です。

廃棄の正しい知識は、企業の信頼性を守り、環境保全にもつながります。今一度産業廃棄物処分について過程を見直し、手間をかけずに適切に処分できる産業廃棄物処分業者を探してみるのも良いかもしれません。


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