建設機械や農業機械のゴムクローラー、そして自動車のタイヤなど、私たちの身の回りで使われているゴム製品は、強度を高めるために加硫(かりゅう)という化学処理が施されています。
しかし、この加硫ゴムは使用後の分解が非常に難しく、「処理困難物」とも言われ再利用が進まない要因となってきました。
これは世界各国でも同様に分解について長年研究が続けられています。近年、日本国内でもこの課題を克服するため、大学・企業・研究機関が連携し、「ゴムを分解して再び使える素材に戻す」ための最先端技術開発が進められています。

ゴムは“再資源化できない素材”から“循環可能な資源”へなってきています。
本記事では、以下の内容を中心に、国内のリサイクル研究の現状と今後の展望を紹介します。
- 豊田合成株式会社による脱硫・再加硫技術
- 超臨界流体を利用した分解研究
- JST・NEDOなどの国家プロジェクト動向
- 大学・企業連携によるゴムクローラー再資源化の可能性
ゴム分解が難しい理由とは?

ゴムクローラーやタイヤなどの「加硫ゴム」は、ゴム分子間に硫黄(S)による架橋構造が形成されています。
この架橋が強靭さと弾力を生みますが、同時に「再溶融・再形成」を不可能にしています。
そのため、従来のリサイクルは以下のような物理的再利用が中心でした。
| 従来の再利用法 | 内容 |
|---|---|
| 破砕リサイクル | 粉砕して舗装材や緩衝材に利用 |
| サーマルリサイクル | 燃料として焼却・熱回収 |
| 芯金再資源化 | 製鉄工場等で加工され、鉄材として商品化され再生利用 |
これに対し現在の研究では、マテリアルリサイクルの研究が盛んに行われており、化学的に加硫結合を切断し、再び原料レベルに戻すという新しいアプローチが進行中です。
豊田合成株式会社の革新技術
日本のゴム再資源化をリードする企業が、豊田合成株式会社です。
同社は、独自の「脱硫再生技術」を確立し、廃ゴムなどを新たなゴム原料として再生しています。
技術の概要
- 加硫ゴムを機械的剪断により脱硫
- 分子構造を壊さずに架橋のみを選択的に切断
- 得られたリサイクル材をマスバランス方式を活用して環境価値の高い再生品として商品化
この技術により、従来一般的であった「パン法」では再生過程で問題となっていた品質の劣化をすることなく、廃ゴムが再びゴム製品として蘇ることが可能になりました。
超臨界流体によるゴム分解研究
近年、化学分解技術として注目されているのが「超臨界流体技術」です。
これは、水やアルコールを高温・高圧下で臨界点を超えた状態にし、溶媒でもあり反応場でもある特殊な状態を利用して分解を促す手法です。
超臨界水による分解メカニズム
- 水を約374℃・22MPa以上に加圧
- ゴム中の架橋硫黄結合が加水分解され、短鎖分子へ
- 同時に炭化水素系油分・ガスが生成
このプロセスは、タイヤ・ゴムくず・樹脂複合廃棄物にも応用されており、
現在は国内複数の大学・産総研などの機関がが中心となって実証研究を進めています。
メリットと課題
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| メリット | 有害ガスが発生しにくく、再利用可能な油・カーボンが得られる |
| 課題 | 高圧設備コストが高く、量産化への技術的ハードルが高い |
この技術が確立されれば、ゴムクローラーのように鉄芯を含む複合材でも一括分解→分離再資源化が可能になると期待されています。
JST・NEDOプロジェクトによる産学連携の進展
日本では国家研究機関である「科学技術振興機構(JST)」や「新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)」が、
ゴムリサイクルを含む「高分子材料の循環利用プロジェクト」を推進しています。
JST「マテリアル循環プログラム」
- 目的:化学リサイクルによる廃ゴムの再資源化技術開発
- 参画機関:東京大学・山形大学・名古屋工業大学・民間企業複数
- 主なテーマ:脱硫・再加硫・選択的分解触媒の開発
NEDO「ケミカルリサイクル技術実証事業」
- 実証対象:廃プラスチック製品
- 技術手法:マイクロ波を用いて標的となる素材を重点的に熱分解する
これらのプロジェクトは、単なる研究に留まらず、民間企業の商業化を前提とした実証実験として行われております。
つまり、日本のゴム分解研究は「産学官一体の社会実装フェーズ」に入っているといえます。
環境・コスト・法制度の課題
日本のゴム分解研究が商業化に至るまでには、いくつかの課題も残されています。
| 課題 | 内容 |
|---|---|
| 技術コスト | 超臨界装置や触媒コストが高く、スケールメリットが必要 |
| 市場整備 | 再生素材の品質認証・流通基盤の再確認 |
| 事業継続性 | 製品需要の確認とリサイクル工程でのCO₂削減効果を定量化する必要 |
これらを克服することで、日本独自のゴム処理モデルが確立される可能性があります。
まとめ|“Made in Japan”のリサイクル技術が未来を変える

日本の企業・大学の取り組みは、
「再利用できない素材を循環可能に変える」という極めて困難なテーマに挑戦しています。
- 化学技術 × 環境工学 × 産業政策が連動する新しい段階へ
- ゴムクローラーのような重量複合材にも応用可能な可能性
- 海外に技術輸出できる日本発のモデル形成
欧州の循環経済モデルと並び、「日本の“化学リサイクル型社会」が確立されれば、
廃ゴム処理の在り方そのものが「コスト」から「価値創造」へと変わっていくでしょう。
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