不法投棄はこうして発見される                   ― 自治体が導入する最新監視技術と根絶に向けた実務 ―

不法投棄は「見つからない犯罪」ではなくなった

産業廃棄物の不法投棄は、環境破壊や地域住民への健康被害を引き起こす深刻な違法行為です。

産業廃棄物の不法投棄事案はピーク時の平成10年代前半と比較し大幅な減少となっていますが、いまだに新規事案は発生しています。
不法投棄の新規判明事案の実行者のうち最も多いのは排出事業者(約30%)で、投棄量の約61%を占めます。
廃タイヤの不法投棄事案のうち、処分が行われていない残存件数は146件で、残存量は61,632tにのぼります。(令和6年度末時点) 

出典:環境省 「不法投棄等の状況(令和6年度)の調査結果資料」


かつては「人目につかない山中に捨てれば分からない」「夜間に運べば特定されない」と考えられていた時代もありました。

しかし現在、不法投棄は 高い確率で発見・特定される行為 となっています。
その背景には、自治体が導入してきた 監視技術の高度化と重層化 があります。

本記事では、不法投棄を根絶するために自治体が実際に活用している
具体的な監視技術・調査手法・運用体制 を、実務目線で詳しく解説します。

自治体の不法投棄対策は「3段階構造」で成り立っている

自治体の不法投棄対策は、単一の方法ではなく、次の3段階で構成されています。

  1. 抑止(捨てさせない)
  2. 発見(いち早く見つける)
  3. 特定(誰が捨てたかを突き止める)

それぞれの段階で、異なる技術と人の関与が組み合わされています。

【抑止】不法投棄を未然に防ぐ監視技術

①固定式・移動式の不法投棄監視カメラ

現在、最も多くの自治体が導入しているのが 不法投棄専用の監視カメラ です。

技術的特徴

  • 赤外線撮影による 夜間・無灯火撮影
  • 人感センサー連動
  • ソーラーパネル+バッテリー式(電源工事不要)
  • LTE通信による遠隔データ取得
  • ナンバープレート判読に耐える解像度

運用上のポイント

  • 固定設置ではなく 定期的に設置場所を変更
  • 「監視中」「カメラ作動中」の看板と併用
  • 映像は警察・検察提出用証拠として保全

特に重要なのは、「投棄行為そのもの」よりも車両・人物・時間帯といった周辺情報の記録 です。

②ダミーカメラ・警告看板による心理的抑止

技術的にはシンプルですが、

  • 「監視されているかもしれない」
  • 「証拠を残されるかもしれない」

という心理的圧力は非常に強く、
実際に 看板設置後に不法投棄が激減した事例 も多数報告されています。

【発見】早期に不法投棄を見つける技術

①ドローンによる上空監視・巡回

近年、山林・河川敷・立入困難区域で活用が進んでいるのが ドローン監視 です。

活用シーン

  • 山間部・林道沿いの定期巡回
  • 河川敷・調整池・ため池周辺
  • 災害後の不法投棄確認

技術的メリット

  • 人が入れない場所も確認可能
  • 短時間で広範囲を撮影
  • 空撮画像の時系列比較で
    「いつ投棄されたか」を推定可能

これにより、発見が遅れて大量化するリスクを低減できます。

②AI画像解析による異常検知

一部自治体では、AIを活用した 画像解析型監視システム が導入されています。
これはAIに衛星写真等を学習させ、期間ごとに比較することにより異常や変化をピックアップさせ、不法投棄を発見する仕組みです。
期間を区切って画像を比較させることにより、万が一不法投棄が行われても常態化し大量化することを防ぐことができます。

主な機能

  • 過去画像との差分解析
  • 新たに出現した物体の自動検出
  • 廃棄物特有の形状・色を学習

人の目では見逃しがちな変化も、AIがアラートとして通知する仕組みです。

【特定】誰が捨てたのかを突き止める技術と調査

①内容物調査(アナログだが最重要)

https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/junkan/img/fb1.0.1.14.gif?utm_source=chatgpt.com

不法投棄の特定で 最も効果的 とされるのが、内容物調査です。

発見されやすい情報

  • 宅配伝票・請求書
  • 工事書類・納品書
  • 医療関連書類
  • ラベル・バーコード・QRコード

これにより、排出事業者や関係者が特定され、排出者責任(廃掃法第3条) が問われるケースも少なくありません。

②車両ナンバー・動線解析

  • 不法投棄現場の監視カメラ
  • 周辺道路の防犯カメラ
  • 高速道路・主要幹線の通過履歴

これらを突き合わせることで、「この時間帯に、この場所にいた車両」を絞り込み、運搬業者や関係者の特定につながります。

③GPS・運行記録の活用

近年では、以下が行政指導・刑事捜査の重要資料となるケースも増えています。

  • 収集運搬車両のGPS履歴
  • デジタルタコグラフ
  • ドライブレコーダー映像

自治体・警察・国の連携体制

不法投棄は自治体単独では対応できない場合が多く、次のような 連携体制 が構築されています。

  • 自治体環境部局
  • 警察(刑事事件化)
  • 環境省(広域・悪質事案)
  • 県境自治体(越境投棄)

特に 県境を越える不法投棄 では、複数自治体の監視データが突き合わされます。

なぜ不法投棄は「結局バレる」のか

不法投棄が発覚する理由は、単一の監視技術ではありません。

  • 監視カメラ
  • ドローン
  • AI解析
  • 内容物調査
  • 通報情報

これらが 重層的に組み合わさる ことで、「完全犯罪」はほぼ不可能な状態が作られています。

排出事業者・収集運搬業者が注意すべき実務ポイント

  • 委託した先で何が起きているか分からない、では済まない
  • 数年後に過去の不法投棄が発覚することもある
  • マニフェスト・契約・処理フローは必ず証拠として残る

不法投棄は 「見えないところでやれば大丈夫」な行為ではありません

今後の不法投棄監視技術の進化

今後はさらに、

  • 衛星画像による広域監視
  • AIによるリアルタイム異常検知
  • 電子マニフェスト×GPS連携
  • データ横断分析による予兆検知

といった 高度監視社会 が進むと考えられます。

まとめ:不法投棄は技術で封じ込める時代へ

不法投棄対策は、注意喚起や倫理観だけに頼る時代から、科学的・技術的に追い詰める時代 へと進化しています。

自治体は、以下のプロセスを、最新技術で支えています。

  • 見る
  • 記録する
  • 比較する
  • 特定する

排出事業者・処理業者に求められるのは、「知らなかった」では済まされない環境が整っているという現実を理解し、適正処理を前提とした体制を構築することです。

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