
産業廃棄物の適正処理は、企業活動における重要なコンプライアンス要件です。そして、その適正処理の要となるのがマニフェスト制度です。
近年は紙マニフェストから電子マニフェスト(JWNET)へ移行する企業が増え、排出事業者にとって「電子化が当たり前」の時代に近づいています。
しかし導入検討の現場では、次のような悩みが必ず出てきます。
- 「電子マニフェストって結局なにが変わるの?」
- 「紙より楽になるって本当?」
- 「JWNETの料金はいくら?初期費用は?」
- 「社内で入力できる人がいない…」
- 「代行起票(代行入力)って違法じゃない?責任は?」
本記事では、排出事業者の担当者が導入前に押さえるべきポイントを、実務目線で体系的に整理します。
電子マニフェストの基本から、導入メリット・注意点、そして「導入コスト」「代行起票システム(ASP)」の現実的な選び方まで、排出事業者様目線で深掘りします。
電子マニフェストとは?(JWNETの概要)
電子マニフェストとは、産業廃棄物管理票(マニフェスト)を紙ではなく、電子情報として登録・保存・管理する仕組みです。
日本では多くの場合、(公財)日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター)が運営する JWNET(Japan Waste Network) を利用します。
紙マニフェストの場合、排出事業者は産業廃棄物を排出する際に7枚複写の帳票を作成し、収集運搬業者・処分業者へ交付し、返送された伝票を決められた期間保管します。
一方で電子マニフェストは、情報をシステム上で共有し、処理状況をオンラインで追跡できる点が最大の特徴です。
排出事業者が電子マニフェストを導入すべき最大理由=排出事業者責任
産業廃棄物処理は「委託したら終わり」ではありません。実は収集運搬業者に引き渡してからが始まりと言っても過言ではありません。
運搬や処分を外部業者に委託しても、排出事業者責任として「処理が適正に行われたかの確認義務」が残ります。
自分たちの手元を離れ、目が行き届かなくなった廃棄物の最終処分が完了し、最終処分が完了した通知を受け取るまでが排出事業者責任なのです。
もし委託先業者が
- 不法投棄
- 無許可処理
- 不適正処理(基準違反)
- マニフェスト未交付・虚偽記載
などを起こした場合、排出事業者も
- 行政指導
- 報告徴収
- 改善命令
- 社会的信用の失墜
といったリスクを負う可能性があります。
電子マニフェスト導入は、この排出事業者責任を果たすための、いわば 「適正処理を証明する管理インフラ」 として極めて効果的です。
電子マニフェスト(JWNET)の仕組み:排出事業者がやること
電子マニフェストの基本フローは以下です。
- 排出事業者が情報をJWNETへ登録
廃棄物種類・数量・荷姿・処分方法・運搬業者・処分業者などを入力 - 収集運搬業者が運搬終了報告
- 処分業者が処分終了報告
- 必要に応じて 最終処分終了報告
排出事業者にとって重要なのは、ただ登録するだけではなく、以下のような運用監督です。
- 期限内に報告が入っているか
- 未報告があれば確認・是正できているか
排出事業者が電子マニフェスト導入で得られるメリット(紙と比較)
返送期限管理が圧倒的に楽になる
紙マニフェスト運用では、A票・B票・D票・E票などの返送状況を追い続ける必要があります。
- 収集運搬・処分業者からの返送が遅い
- 期限が超過した際の催促が必要
- 法定保存期間中に紛失が起こる
これが電子化により、システム上で可視化され、上記のトラブルが起こるのを未然費防いでくれるため、工数が激減します。
紛失・押印漏れ・記載漏れなどの人的ミスが減る
紙マニフェストで特に多いのが以下です。
- 記載漏れ
- 押印漏れ
- 数量ミス
- ファイルの綴じ間違い
- 誤廃棄
電子化により入力項目が定型化され、ミスを抑制できます。また、ご記載してしまった際でもシステム上で簡単に修正を行えます。
監査・ISO・内部統制に強い
電子マニフェストは検索性が高く、履歴も残るため
- 社内監査
- 会社監査
- ISO14001
- 行政立入
などで即時に提示でき、説明力が高まります。
産廃管理の属人化防止・BCP対策にもなる
紙マニフェストの管理はやり方が煩雑で、担当者依存になりやすいですが、電子は情報共有しやすく、引き継ぎが容易です。
排出量・委託コストの分析が可能になる
電子データにより、以下などを集計しやすくなり、コスト管理に直結します。
- 月次排出量推移
- 廃棄物種別の傾向
- 委託先別の発生量・費用
ただし注意:電子化しても「排出事業者の確認責任」は消えない
電子マニフェストは便利ですが、ここを誤解すると危険です。
電子マニフェスト導入=リスクゼロではありません。
排出事業者は、電子でも紙でも以下が問われます。
- 処理状況を把握しているか
- 未報告があれば是正しているか
つまり電子化によって
“監督できる仕組みが整う”
のであって、
“監督しなくてよい”
わけではありません。
排出事業者が導入前に確認すべき3つのポイント

委託先(収運・処分)が電子マニフェストに対応しているか?
電子マニフェストは排出側だけ導入しても回りません。収集運搬業者及び処分業者のすべてが加入していないと機能しません。
委託先が対応していない場合は、以下を検討する必要があります。
- 紙併用
- 委託先切替
社内で「誰が登録するのか」運用ルールがあるか?
失敗例で多いのがここです。
- 現場が情報を出さない
- 登録者が兼務で手が回らない
- 登録漏れ・遅延が出る
社内での運用設計が曖昧だと「紙よりひどい」状態になってしまうことがあります。
以下で述べますが、こういった状況を回避するために「代行起票」といったシステムも存在します。
委託契約書・許可証管理などとセットで整備する
電子マニフェストは適正処理の証拠ですが、監査や行政はセットで確認します。
- 委託契約の有無
- 許可証の写し保管
- 事前調査/現地確認
などの整備が重要です。
【最重要】電子マニフェスト導入コスト:排出事業者が知っておくべき費用の内訳
電子マニフェスト導入で発生するコストは、次の3つに分かれます。
- JWNETの利用料金(公式費用)
- 社内運用コスト(人件費・教育)
- 外部システム費用・代行起票費用(任意)
排出事業者の多くは「1」ばかり見がちですが、実務上は「2」が最大コストになります。
JWNET利用料金
排出事業者のJWNET基本料(年額)はA料金:26,400円(税込)、B料金1,980円(税込)が基本です。(加入月により初年度は月割り)A料金及びB料金の違いは、マニフェストの発行件数の違いが主です。
年間で2400件以上マニフェストを発行する場合にはA料金での登録が目安となりますが、ほとんどの排出事業者はそこまでの件数には及びませんので、B料金1,980円税込)での登録となるはずです。
加えて、利用件数に応じた従量料金が発生します。
引用:JWNET利用料金
ポイント
JWNETの金額は「高い」より「安い」部類です。問題は入力・運用の工数です。
社内運用コスト(ここが一番効く)
排出事業者側の現場では、電子化すると次の課題が噴出します。
- 現場情報が揃わず登録できない
- 数量が確定しない
- どの廃棄物コードにすべきか迷う
- 委託先が終了報告を入れない
- 担当が不在で滞留する
結果として、以下のように、JWNET料金より社内工数が大きくなります。
年に数回の操作であり、都度操作マニュアルを読みながら1件登録するのに10分以上。
外部システム(ASP)費用・代行起票費用
この「社内工数」を削減するために導入されるのが以下です。
- 代行起票(代行入力)サービス
- ASP(電子マニフェスト連携管理システム)
代行起票(代行入力)とは?排出事業者目線の注意点
代行起票=排出事業者の入力作業を外部が代行すること
代行起票とは、排出事業者が本来行うJWNET登録作業を、外部業者が代行する仕組みです。
実務では以下を受け取り、代行業者が電子登録を行います。
- 紙マニフェスト
- 伝票
- 計量票
- 契約情報
代行起票は違法?責任はどうなる?
代行入力そのものは普及していますが、注意点があります。
入力は代行できても排出事業者責任は代行できません
つまり排出事業者としては以下をチェックする体制が必要です。
- 登録内容の妥当性
- 報告が遅れていないか
電子マニフェストの登録を収集運搬業者等が代行して入力し、排出事業者は正しく入力されているかを確認する必要があります。
代行起票の運用モデルは2種類ある
A:完全代行(丸投げ)
- 入力~登録まで代行
- 排出側はほぼ関与しない
メリット:工数削減
デメリット:確認不十分だと誤った情報のまま、処理が進んでしまう。
B:代行入力+排出事業者承認(推奨)
- 代行業者が入力
- 排出側が承認して確定
この方式だと、排出事業者責任を担保しつつ工数削減できます。
ASP(代行起票システム)とは?JWNETだけでは足りない理由
ASPとは、JWNETと連携して、以下を実現するシステムです。
- 入力支援
- 業者間データ連携
- 紙と電子の併用管理
- 承認フロー
排出事業者がASPを導入する理由は、JWNET単体では以下のような課題が出るためです。
- 操作性が現場向きでない
- 現場情報の収集が難しい
- 複数委託先の管理が煩雑
排出事業者はJWNETのみでよい?ASPが必要?判断基準は何か
JWNETのみでよい企業
- 件数が少ない(月10~20件)
- 委託先が電子対応100%
- 管理担当が確保できている
ASP/代行起票を検討すべき企業
- 件数が多い(月30件以上)
- 現場・拠点が複数
- 紙と電子が混在
- 管理担当が兼務
- 監査が厳しい(上場・親会社管理)
導入手順(排出事業者向け)チェックリスト
- 排出状況棚卸(品目・件数・委託先)
- 委託先の電子対応確認
- JWNET加入申請
- 社内運用ルール整備(登録者・承認者・期限)
- マスタ整備(品目コード・委託先)
- 試験導入(限定範囲)
- 本格導入(全品目・全拠点)
- 未報告監視・定期点検
12. よくある質問(排出事業者向けFAQ)
委託先が電子対応なら不要。未対応なら紙併用になります。
軽くなりません。排出事業者責任は残ります。
多くは社内フロー不足(現場→事務連携、承認不在など)です。
事前にシミュレーションを担当者主体で進めておきましょう。
まとめ:電子マニフェストは排出事業者の「守り」と「効率化」の両立策

電子マニフェスト導入は、以下を同時に実現する有効な手段です。
- 排出事業者責任を果たすための仕組み化
- 返送期限管理の効率化
- 監査対応強化
- 紙の紛失・ミス削減
- 排出量・コスト分析
ただし成功の鍵は、JWNET料金ではなく
社内運用(入力体制)をどう作るか
にあります。
件数が多い企業ほど、ASPや代行起票を含めた設計が重要になります。
株式会社オーシャンなら収集運搬から処分まで一括して対応しています
株式会社オーシャンでは「産業廃棄物処分業」の許可に加えて「産業廃棄物収集運搬業」の許可も取得しているため、回収から処分まで完結できます。排出者であるお客様は弊社までお電話をいただければ私たちが回収に伺い、積み込みから弊社作業員にて行わせていただきますので、お客様には一切お手間はいただきません。
詳しくは以下をご参照ください。


