排出事業者が産業廃棄物収集運搬を委託する際の完全ガイド

なぜ今「委託時のチェック」が重要なのか

産業廃棄物の適正処理は、排出事業者の責務(廃掃法第3条)として強く位置づけられており、委託先である収集運搬業者が不適正処理を行った場合でも、排出者はその責任を免れることができません。

近年、全国では毎年数十件以上の行政指導・行政処分が行われています。
これらの多くは、「排出者の確認不足」、「業者の法令違反を見抜けなかったこと」が背景にあります。

本記事では、実際に自治体が公表した行政指導・行政処分事例を交えながら、
排出事業者が収集運搬業者へ委託する際に必ず押さえるべきポイントを、法律・実務の両面から詳しく解説します。

産業廃棄物の委託における排出事業者責任とは

排出事業者の責務は、以下の3つに整理できます。

  1. 廃棄物を適正に処理する義務(自主処理義務)
  2. 許可業者に委託する義務(委託基準遵守)
  3. 処理状況を把握・管理する義務(マニフェスト確認義務)

特に委託基準(法第12条第5項)は、排出者と業者双方に適用される根幹規定です。

しかし、実務の現場では「許可証を持っていれば安心」という誤解が多く、これが不適正処理リスクの温床となっています。

実際にあった行政処分・行政指導事例から読み解くリスク

ここでは、実際に自治体が公表した具体的な事案を取り上げ、排出者にとって何が問題だったのかを詳しく整理します

①東京都:有限会社足立興業など数社の許可取消処分(2025年8月)

東京都は2025年、有限会社足立興業ほか数社の産業廃棄物収集運搬業許可を取り消しました

処分理由

会社の役員が刑法・道路交通法違反により刑罰を受け、許可の欠格要件に該当したため。

排出者にとってのリスク

一見すると排出者に関係なさそうですが、実務上は大きな問題を生じます。

  • 委託先が 突然許可取消しとなり、運搬が不可能に
  • 許可取消し前後に委託した廃棄物の処理状況を排出者が説明できなくなる
  • マニフェストが返送されない事態が発生する可能性

排出者は、委託先の「許可が維持されているか」を継続的に確認する必要があります。

②千葉県:株式会社E-lineほか複数社の許可取消し(令和3年)

千葉県では、以下の重大な違反が確認され、複数の収集運搬業者が許可取消処分を受けました。

違反内容
  • 無許可処分業者への処分委託(=違法な再委託)
  • 委託基準違反(法第12条第5項)
  • 受託禁止違反(第21条)

排出者にとって最も重大なポイント

特に重要なのは、排出事業者側も「委託基準違反」に巻き込まれる可能性がある点です。

排出者が以下の状態で委託した場合、排出者自身が行政指導の対象となることもあるため注意が必要です。

  • 委託契約書の不備
  • 処理フロー未確認
  • 実際の処分先をチェックしていない

③大量の建設系廃棄物を無許可埋立・隠蔽した事案(環境省資料)

環境省の公開資料では、建設系産業廃棄物を施設内に 約80,000m³ も堆積・一部埋立で隠蔽していた事案 が報告されています。

自治体は数十回にわたり行政指導を行ったものの是正されず、最終的には不法投棄として刑事事件化した典型例です。

排出者が負うリスク

このような重大不正処理が行われる背景には、以下のような排出者側の落ち度があります。

  • 処理状況を確認していない
  • 立入検査の実施や現場確認を行っていない
  • マニフェストの返却確認が不十分

つまり排出者が「適正処理されている」ことを把握する努力を怠っていた場合、
廃掃法第3条の「排出者責任」を問われる可能性があります。

委託時に排出者が必ず確認すべきポイント10項目

ここからは、排出事業者が委託時に確実に押さえるべき具体的チェックポイントを解説します。

①収集運搬業許可証の真偽と最新性の確認

最低でも以下を確認します。

  • 許可番号
  • 許可更新年月日
  • 積替保管の有無
  • 収集運搬可能な品目(廃プラ・金属くず・がれき類等)
  • 事業範囲の変更状況

許可の更新期限切れは、行政処分事例でも最も多い違反の1つです。

許可証をPDFで受け取った場合も、自治体HPから原本と照合するのが鉄則です。

②委託契約書の必須記載事項を確認(法第12条第5項)

契約書には以下が盛り込まれている必要があります。

  • 産業廃棄物の種類
  • 数量・性状
  • 運搬方法
  • 処分方法・処分先の名称
  • 緊急時の連絡体制
  • 再委託禁止の明記

行政処分事例の多くは、「委託契約書が不備」→「違法再委託」というパターンをたどっています。

③実際の処分先(最終処分場・中間処理場)まで確認する

排出者責任を守るためには、「運搬業者+処分業者」セットで確認する必要があります。

収集運搬業者だけが許可を持っていても、処分先が無許可であれば不適正処理となります。

④マニフェスト(管理票)の適正運用

マニフェストは排出者責任を証明する最も重要な書類です。

不備が多いケースとしては以下になります。

  • 必要事項の未記入
  • 交付漏れ
  • 返送されても中身を確認していない
  • 電子マニフェストの「確認義務」未実施

特に返却されたマニフェストの最終処分終了日・受託者名称・処分方法を確認しない排出者が多く、行政指導の対象になりやすい点です。

⑤現地確認(実地確認)を定期的に行う

環境省ガイドラインでは、排出者の「現地確認」が推奨されています。

  • 積替保管場所の管理状況
  • 飛散・流出防止措置
  • 許可範囲外の品目の混入有無
  • 適切な保管量の遵守

不適正処理事案の多くは、「実地確認が行われていれば防げた」と指摘されています。

⑥収集運搬ルートと荷姿を明確化

荷崩れ事故・飛散事故が発生すると、排出者にも損害賠償リスクが及ぶ可能性があります。

  • フレコンバッグの強度
  • 荷台の形状
  • ロープ掛けの有無
  • 飛散防止措置

これらは契約書または仕様書に明記しておくべき項目です。

⑦緊急時対応マニュアルの整備

事故が発生した場合、排出者は以下の対応を求められます。

  • 事故連絡
  • 原因分析
  • 再発防止策の策定

行政処分事例では、事故報告を「怠った」ことで行政指導につながったケースもあります。

⑧許可の欠格要件(暴力団等)の確認

東京都の「足立興業」事案のように、役員等が刑罰を受けると許可取消しになるという点は排出者にとって重要です。

そのため、以下を定期的に確認することが望ましいです。

  • 本社所在地
  • 役員の変更状況
  • 登記の最新性

⑨業務実績・過去の行政指導履歴を確認する

  • 過去に行政処分を受けていないか
  • 処分理由は何か
  • 再発防止策が実施されているか

これらは自治体HPで公表されています。
排出者が定期的にチェックするだけで、重大リスクを回避できます。

⑩電子マニフェスト(JWNET)を活用する

電子マニフェストは以下の大きなメリットがあります。

  • 返戻確認の漏れ防止
  • 違反の自動検出
  • 処理状況の可視化

行政指導の原因として「紙マニフェストの管理ミス」は非常に多く、電子化による改善効果は大きいです。

5|委託先業者と信頼関係を構築するための「継続モニタリング」

一度委託先を選定したら終わりではなく、継続的に状況を把握し、再評価する仕組みが必要です。

①定期モニタリング項目

  • 許可証の更新
  • 車両・運搬体制の変化
  • 処分先の変更
  • マニフェスト返送状況
  • 行政指導の有無

特に処分先の変更は見逃しがちで、違法処分に巻き込まれやすい要因です。

②委託先とのコミュニケーション

  • 作業内容の改善要望
  • 事故報告の取り扱い
  • 廃棄物の性状変化の共有

排出者と委託先の連携が強固であるほど、不適正処理リスクは大きく低減します。

行政指導を受けないための「組織体制づくり」

排出者の社内体制の不備が原因で行政指導を受けるケースも多いため、組織としての仕組みづくりが必要です。

①内部ルールの整備

  • 産業廃棄物管理規程
  • 委託契約書のチェックリスト
  • マニフェスト管理台帳
  • 年次監査の実施ルール

これらが整備されていれば、行政監査にも対応しやすくなります。

②担当者教育

担当者が廃掃法の基礎知識を持っているかどうかで、適正処理の質は大きく変わります。

研修項目としては以下があります。

  • 委託基準
  • マニフェスト制度
  • 処理フロー
  • 不法投棄のリスク
  • 実例から学ぶ行政処分

こうした教育を継続的に行うことで、組織の遵法レベルが向上します。

行政指導・行政処分から排出者が学ぶべき教訓

これまで紹介した行政事例から得られる教訓は明確です。

教訓①:更新期限・欠格要件・処分履歴を必ず確認

許可証を持っているだけでは「安全」とは言えない。
→ 更新期限・欠格要件・処分履歴を必ず確認する。

教訓②:再委託禁止の徹底

委託契約書と処理フローの確認不足が最も多い違反原因。
→ 再委託禁止の徹底が必要。

教訓③:マニフェスト確認と現地確認

不適正処理は排出者責任として問われる。
→ マニフェスト確認と現地確認は必須。

教訓④:年次見直し・内部監査

問題が起きる前に「監視・モニタリング」する仕組みが重要。
→ 年次見直し・内部監査を導入する。

まとめ:排出者のチェック体制が企業リスクを大幅に減らす

産業廃棄物の委託における排出者責任は、単に法律上の義務というだけでなく、企業の社会的信用に直結する重要なテーマです。

本記事で紹介した行政指導・行政処分事例は、いずれも「排出者が適切に業者を選定し、確認していれば防げたもの」が大半でした。

排出者が徹底すべき3つの柱

  1. 委託先業者の適格性チェック(許可・契約・処分フロー)
  2. 処理状況の把握・監視(マニフェスト・現地確認)
  3. 社内体制の強化(規程・教育・監査)

これらを継続的に実施することで、行政指導リスクを限りなく低く抑えることができます。


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