技術管理者講習の中でも重要性が高い「破砕・リサイクル施設コース」について、講習の概要・対象者・学習内容・修了後のメリットなどを、最新の法令・運用実務に基づいてわかりやすく解説します。

産業廃棄物は出来るだけ埋め立て処分になる量を減らすための取り組みが進められています。
処分の過程でそのまま再使用できるものは再使用されたり、手を加えて違う資源として再利用されたり、燃料として使われたりしており、その結果令和4年度の埋め立て処分割合は約2%となっております。
これは諸外国と比較しても低い数値となっており、いかに日本がリサイクルに関して高い技術と意識をもって取り組んでいるかが分かります。
そんな高いレベルでの産業廃棄物の適正処理とリサイクルを推進するうえで、重要な役割を担うのが「破砕・リサイクル施設」です。これらの施設は産業廃棄物を資源として使用するためのプロセスで最も重要な施設です。これらを適切に管理・運営するために、豊富な知識や技術、経験をもった人材を配置することが必要です。
そのため、「廃棄物処理法」第21条に基づき施設の設置者には「産業廃棄物処理施設技術管理者」の配置が義務付けられています。

出典:産業廃棄物排出・処理状況調査報告書令和4年度速報値 (環境省環境再生・資源循環局廃棄物規制課)
破砕・リサイクル施設コースとは
「破砕・リサイクル施設コース」は、産業廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)に基づき、破砕・選別・再資源化などの中間処理工程を行う破砕施設を適正に運営するために管理や人材育成の中心を担う管理者育成を目的とした専門講習です。
産業廃棄物処理施設技術管理者は、施設の構造・設備の維持管理基準の作成、処理過程の監視、他の従業員に対しての教育や法令遵守の徹底など、破砕施設運営の中核を担います。
資格要件には学歴や処理施設での実務経験により要件が細かく区別されており(下表参照)、一定のレベルを求められます。
破砕・リサイクル施設では、処理対象物や工程が多岐にわたり、破砕施設特有の危険も多くあるため、他の講習区分と比較しても実務的・技術的な内容が非常に多いのが特徴です。
受講対象者と受講資格
破砕・リサイクル施設コースは、以下のような施設の技術管理者を目指す方が対象となります。
技術管理士は専門的な知識が必要であり、認定に工学系の学歴や経験年数等の要件が定められています。
しかしその要件を満たしていない方でも国が認定している教育カリキュラムである産業廃棄物処理施設技術管理者講習「破砕・リサイクル施設コース」を受講し、認定試験に合格することで認定証を取得でき、経験者と同等の能力があると認定されます。
コースには「基礎課程」・「管理過程」があり、基本的に「基礎・管理過程」を受講しますが、経験年数などの一定の基準を満たしている場合には「管理過程」のみを受講します。
対象施設例
- 建設廃材・コンクリート・木くず・金属くずなどの破砕施設
- 廃プラスチック類やゴム、廃タイヤなどを破砕・選別・再資源化する施設
- 再生砕石や燃料化(RPF・RDF)などを行うリサイクル施設
- 自動車解体・家電リサイクル・シュレッダー施設 など
受講資格

出典:産業廃棄物処理施設技術管理者講習募集要項(一般財団法人 日本環境衛生センター)
講習内容とカリキュラム
破砕・リサイクル施設コースの講習は、「基礎・管理過程」の受講生は8日間の講習受講が必要です。
前半4日間は基礎課程のカリキュラムを、後半4日間は管理過程のプログラムを受講し、全日程を受講した受講生のみが最終日の夕方から行われる認定試験を受験できます。
「管理過程」の受講生については、4日間の講習日程で、「基礎・管理過程」の受講生の後半4日間と同じ会場で受講します。以下は代表的なカリキュラム内容です。
法令・制度関係
- 廃棄物処理法・施行令・施行規則の概要
- リサイクル系の各種関係法令(自動車リサイクル法・小型家電リサイクル法・国際法関係など)
- 許可制度・技術管理者制度の位置付け
- マニフェスト制度と帳簿管理
- 行政処分・罰則・改善命令 など
施設の構造・設備
- 破砕機・選別機・集塵装置・防音・防振対策
- 施設の設計基準・維持管理基準
- 災害・事故防止対策(火災、飛散、漏洩など)
- アスベストやPCB等を含む廃棄物への対応
処理工程と管理
- 廃棄物受入から処理・搬出までの一連の流れ
- 廃棄物毎の取扱要領、破砕時の注意点等の確認
- 異物混入・不適物の除去と選別
- 再資源化工程(再生砕石・燃料化・材料リサイクル)
- 排ガス・粉じん・騒音・振動対策の実務
実務・演習
- 処理施設の維持管理計画の作成
- 日常点検・記録・報告の実例
- 行政への届出・許可申請に関する演習
- 過去の行政処分事例・事故例の共有
修了試験と資格取得の流れ
講習の最後には修了試験が行われます。試験内容は、講義で学んだ法令・技術・管理実務などからの出題で、全問マークシート方式となっております。
試験出題範囲は相当多岐にわたり、8日間という期間で網羅しなくてはなりません。そこで、各講師は講義の際に特に試験に出やすいポイントを「重要ポイント」ということで強調してくれます。その個所にマーカーをつけるなどし、重点的に学習を行うことで能力認定試験での得点につながります。
先ほども述べたように、この認定試験を受けるためには各コースに定められたすべてのカリキュラムを受講する必要があります。
万が一、講習期間中に体調不良等の理由により継続受講ができなくなってしまった場合でも、所定の期間内であれば別日程で開催される同コースに振り替え、再受講することができます。
問題数は「基礎・管理過程」を受講した方で40問。「管理過程」のみ受講の方は20問となっており、それぞれ正答率80%以上が合格ラインとなっております。
試験を受けてから1か月以内を目途に協会から郵送にて試験合格者には認定証が、不合格者には再受験の案内通知が届きます。再試験は所定の期間内に2回まで受験することができます。(1回ごとに再試験料¥5,400が必要)
資格取得までの流れ
- 受講申込(実施団体の募集要項を確認する。)
- 受講(講習4~8日間)
- 能力認定試験の受験
- 郵送にて試験結果の開示 合格 → 認定証の交付、不合格→再試験の案内
- 施設の技術管理者として選任・届出
※一般社団法人 日本環境衛生センターのHPには各コースごとに開催日程を掲示しています。オンライン受講と会場受講の2つから自身の都合により選択することができます。
会場受講の場合、募集が開始されてから比較的早い段階で枠が埋まってしまうことが多いため、頻繁にHPを確認するか電話にていつ頃募集が開始されるのか確認することをお勧めします。
※修了証は全国共通で有効です。複数施設の兼任も可能ですが、実務上は常勤性が求められるケースが多いです。
資格取得後の役割と法的責任
破砕・リサイクル施設の技術管理者は、単なる名義上の担当ではなく、法令上で選任が義務付けられている資格者です。
選任していない場合や、管理者が実質的に機能していない場合は、行政処分や刑事罰の対象となる可能性があります。資格取得後も継続した勉強により自身の見識を常に高める姿勢が求められます。
主な役割
- 施設の運転管理と安全対策(作業手順マニュアルの作成等)の実施
- 法令に基づく維持管理・記録・報告
- 行政対応(立入検査・改善命令など)
- 現場作業員への技術指導・教育
法的責任
- 廃棄物処理法第12条の3に基づく選任義務
- 維持管理基準違反 → 改善命令・業務停止・許可取消のリスク
- 過失による事故・火災 → 行政処分・損害賠償・刑事責任の可能性
受講方法・日程・費用
破砕・リサイクル施設コースは、以下のような方法で受講できます。
項目 | 内容 |
---|---|
実施機関 | 一般社団法人 日本環境衛生センターなど |
開催地 | 主要都道府県(年数回のみの実施) |
受講形態 | 対面講習またはe-ラーニングでのオンライン受講 |
費用 | 基礎・管理過程:101,520円(教材費・試験料込み) 管理過程 :64,800円(教材費・試験料込み) |
日程 | 年数回開催、定員制(早期申込推奨) |
👉 最新情報は日本環境衛生センターのHPを確認してください。(参考:https://www.jesc.or.jp/)
破砕・リサイクル施設の重要性と今後の展望
近年、建設廃棄物・廃タイヤ・ゴムクローラーなど、多様な処理困難物と言われている廃棄物の再資源化需要が高まっています。
また、カーボンニュートラルや資源循環型社会の構築に向けて、破砕・リサイクル施設の役割はますます重要になっています。
- 高度な分別・破砕技術によるリサイクル率の向上
- RPF・再生砕石など、エネルギー・建設資材としての再利用
- 火災や不法投棄への対策強化
- AI・IoT技術の導入によるスマートリサイクル化、リサイクル方法の多様化
これらを担う技術管理者には、従来以上に実務能力と法令知識、学び続ける姿勢が求められます。
まとめ
破砕・リサイクル施設コースは、産業廃棄物処理の役割の中でも中核的な位置づけを担う資格講習です。法令遵守と安全管理の両立が求められる現場において、適切な知識と技術を備えた技術管理者は不可欠です。
- 破砕・リサイクル施設の運営には、技術管理者の選任が法律で義務付けられている
- 講習では法令・技術・管理実務を体系的に学ぶことができる
- 資格取得後は、現場運営の責任者として重要な役割を果たす
これから破砕・リサイクル施設を運営する事業者、技術職のキャリアアップを目指す方は、ぜひ受講を検討してみてください。
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