ゴムクローラー市場規模の推移と拡大要因を徹底分析

建設機械や農業機械に広く用いられる「ゴムクローラー」は、走行安定性・低振動・低騒音性などの特性から、近年急速に需要が拡大しています。
しかし、市場拡大の背景には機械数の増加などの要因がありますが、それだけでなく、製品寿命の短縮・使用環境の厳格化・素材組成の変化など、構造的な要因も存在します。機械数の増加だけではない、寿命短縮・素材変化・使用環境の影響についても言及します。

本稿では、ゴムクローラー市場の過去から現在までの推移をデータで示しつつ、成長を支える裏側の要因を産業・技術・環境の各観点から分析します。

世界のゴムクローラー市場規模の推移

ゴムクローラー市場は、建設・農業・産業機械分野の拡大を背景に、2020年代に入り年平均5〜7%の成長率を維持しています。

年度世界市場規模(USD)出典・出所
2015年(推定)約12.6〜13.1億ドル※2022年19億ドルをCAGR6%逆算(筆者試算)
2022年約19億ドルTransparency Market Research(2023)
URL: transparencymarketresearch.com
2023年約19.2億ドルYH Research「Global Rubber Track Market Report 2023」
URL: presswalker.jp/press/33432
2024年約22.1億ドルDataintelo「Rubber Track Market Forecast 2024」
URL: dataintelo.com/report/rubber-track-market
2025年約21.4億ドルCognitive Market Research(2024)
URL: cognitivemarketresearch.com
2030年(予測)約31.8億ドルP&S Market Research(2024)
URL: psmarketresearch.com/market-analysis/rubber-track-market
2031年(予測)約32.0億ドルTransparency Market Research(2023)
2033年(予測)約37.0〜38.5億ドルMarketIntelo / Dataintelo(2024)

📊 成長率(CAGR):約6.1〜6.5%(2024〜2033年)

【解釈】
世界市場では、2022年の約19億ドルから2030〜2033年にかけて30〜38億ドル規模へ拡大が予測されており、およそ1.6〜2倍の市場成長が見込まれています。
成長の中心は「アジア太平洋地域(特に中国・日本・韓国)」であり、全体の約23%を占めると推定されています(Cognitive Market Research, 2025)。

日本市場の現状と地域的特徴(関東甲信越を含む)

国内市場規模

  • 日本市場は2025年時点で約68百万USD(約100億円前後)と推定されています(Cognitive Market Research, 2024)。
  • 上記の数値はアジア太平洋地域全体の約6〜7%を占めると見られる。
  • 市況としては、国内メーカー(ブリヂストン、住友ゴム、諸岡など)が高品質製品を提供しつつ、廉価な輸入品との競合が進行中といった状況である。

関東甲信越地域の推計(農業・建設需要)

関東甲信越地域(茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨・長野・新潟)は、

  • 農機の稼働率・保有台数とも全国上位。
  • 建設工事件数が多く、農業+建設両面で廃クローラーの排出ポテンシャルが高い地域です。

仮定モデルでは、関東甲信越だけでも年間約2,400〜5,300トンのゴムクローラー廃棄物が発生し得る状況である。

市場規模拡大の主因を多角的に分析

ゴムクローラー市場は「機械数が増えたから伸びている」という単純な構造ではありません。
むしろ、製品寿命の短縮・素材変化・環境劣化・廉価品の普及など、複合的な要因が絡んでいます。

以下に、主な要因を5つの視点で整理します。

要因①:機械の普及・稼働時間の増加

  • 建設・農業の双方で「小型クローラ機」が普及。
    → ミニショベル、コンパクトローダー、クローラダンプ、コンバインなど。
  • またその一方で農業機械の大型化・作業日数増により、年間走行距離・稼働時間が上昇
  • 都市建設・再開発・農地整備等の需要増が後押し。

⇒ ゴムクローラー装着機械の「総稼働時間」が増加し、交換需要が高まる。

要因②:素材・製造プロセスの変化(環境対応・軽量化)

  • 欧州REACH規制やRoHS指令対応により、耐久性向上剤(可塑剤・促進剤)の使用制限。
    → 微妙な摩耗・耐候性の低下を招く。
  • 再生ゴム混合比率が増加し、「再生材+天然ゴム」構成比が変化
  • 軽量化設計(芯金薄型化、ゴム肉厚減少)により柔軟性UP・重量DOWNする一方で、剥離・切創・摩耗進行が早まる傾向が出ている。

要因③:使用環境の厳格化と気候影響

  • 夏季の高温化、冬季の凍結サイクルにより、加硫ゴムの微細クラック進行が加速。
  • アスファルト舗装面での摩擦走行・紫外線曝露などが寿命短縮を招く。
  • 農業現場でも、泥・砂利・石灰・肥料などの化学的劣化因子が増加。

⇒ 「理論寿命5年」でも、実使用では3年程度で交換される事例が増加。

要因④:廉価製品の普及による短命化

  • 東南アジア・中国製の低価格クローラーが市場に急増。
    → コスト面で魅力があるが、平均寿命2〜3年で劣化する製品も存在。
  • 国内ユーザー(農家・建設業者)は「安価品→頻繁交換」へとシフト。

参考:
クボタ・ヤンマー販売店ヒアリング(2024年)
「純正品は5〜7年保つが、ノーブランド輸入品は2〜3年で摩耗や剥離が見られる」

要因⑤:政策・補助金による機械更新促進

  • 農業機械導入補助事業(農水省)や、排出ガス規制適合機への更新支援。
  • 都市部の建設現場では「低騒音・低振動型建機」の採用が進む。
    → ゴムクローラー仕様が優先採用される傾向。

性能低下が市場を押し上げる「逆説」

興味深いのは、性能(寿命)が短くなるほど市場が拡大するという逆説的現象です。

寿命短縮 → 交換サイクル短縮 → 市場拡大

平均寿命年間交換率想定市場増加率
5年20%基準値
4年25%+25%
3年33%+65%

(筆者試算:同一稼働台数下での交換サイクル比較)

→ 寿命が2年短くなるだけで、交換需要は約1.5倍に膨らみ、市場規模を押し上げる結果となります。
実際、ブリヂストンや住友ゴムのIR資料でも、2022〜2024年に「リプレース需要増加」が明記されています。

地域別の潜在廃棄量(日本・関東甲信越)

前提仮定

  • ゴムクローラー装着農機:全国約20万台(農水省統計)
  • クローラー重量:1台あたり約400kg(中型機)
  • 寿命:3〜5年
  • 関東甲信越シェア:約15%

潜在廃棄量の推計表(筆者試算)

日本全体廃棄量(t/年)関東甲信越(t/年)備考
2025約16,000〜26,000約2,400〜5,300現行ベース
2030約18,000〜28,000約2,760〜6,100農機普及増加後
2035約20,000〜30,000約3,100〜6,900長期予測

出典:日本建設機械工業会年報「ゴムクローラー出荷量推移」

市場拡大がもたらす課題とチャンス

  • 課題:産業廃棄物量の増加
    • 廃クローラーは鉄芯+加硫ゴムの複合体でリサイクルが難しい。
    • 不法投棄や不適正保管のリスクが顕在化(茨城県小美玉市事例など)。
  • チャンス:再資源化技術の進展
    • 超臨界分解・低温粉砕・再加硫など、ゴム再生技術の実用化が進展中。
    • 国内企業がマテリアルリサイクルについて実証段階へ。
  • 政策連動:循環経済戦略
    • 欧州では「Circular Economy Action Plan」でゴム製品などの再資源化を推進。

まとめ:市場拡大の本質は「使い方」と「寿命の見直し」

ゴムクローラー市場は今後も確実に成長を続ける見込みです。
ただし、その内訳の半分は「機械の増加」ではなく、寿命短縮と使用環境の変化による交換需要です。

  • 2022年:約19億USD → 2031年:約32億USD(世界市場)
  • 日本市場:約100億円規模(2025年)
  • 成長要因の約40〜50%が「耐久性・寿命要因」に起因(筆者分析)

この現象は、産業としてはプラスでも、環境負荷の観点では課題を伴います。
したがって今後は、

  • リサイクル性を考慮した素材設計、
  • 寿命管理と交換タイミングの可視化、
  • 地域単位での共同回収・再利用スキームの整備、
    が重要なポイントとひとつとなるでしょう。
参考文献・引用元一覧

  1. Transparency Market Research (2023) “Rubber Track Market – Global Industry Analysis”
    URL: https://www.transparencymarketresearch.com/rubber-track-market.html
  2. P&S Market Research (2024) “Rubber Track Market Size & Forecast to 2030”
    URL: https://www.psmarketresearch.com/market-analysis/rubber-track-market
  3. Cognitive Market Research (2024) “Rubber Track Market Report 2025 Forecast”
    URL: https://www.cognitivemarketresearch.com/rubber-track-market-report
  4. Dataintelo (2024) “Global Rubber Track Market Outlook”
    URL: https://dataintelo.com/report/rubber-track-market
  5. MarketIntelo (2024) “Rubber Track Market Trends 2024–2033”
  6. 日本建設機械工業会『年報』(2023)

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