
建設機械や農業機械などに使用されるゴムクローラーは、長期間の使用によって摩耗・破損し、定期的な交換が必要となります。
タイヤも同じく、適切な時期に交換しなければバーストなどのリスクがあります。
また、使用済みのゴムクローラーやタイヤを単純に廃棄するだけでは、環境への負荷が大きくなってしまいます。地球環境を守るためにも法的にも適正な処理が求められています。
過去にゴムクローラーのリサイクルについての記事もありますので併せて読むことでより理解を深めることができます。
本記事では、ゴムクローラーやタイヤのリサイクル方法や産業廃棄物としての処理方法について最新の動向も含めて詳しく解説します。
ゴムクローラーやタイヤの基本構造と素材の特徴
ゴムクローラーは、建設用ミニショベルや農業用コンバインなどに装着されるベルト状の走行部品で、主に合成ゴムとスチールコード、芯金などの金属部品で構成されています。
高い耐久性と柔軟性を併せ持つ一方で、処分時にはその構造がリサイクルの難しさに繋がっています。また、タイヤも同じく表面は合成ゴムですが、タイヤ自体の張性を保つために内部にはスチールワイヤーと呼ばれる金属が入っています。
ゴムは非常に密度が高くゴムの分子同士が強く結びついているため、分離することが困難でリサイクルが難しいことで知られています。
また、その一方で燃やした際には高いエネルギー量が得られるため、現在は化石燃料に代わる燃料として脚光を浴びています。
燃料種 | 発熱量(MJ/kg) |
---|---|
廃タイヤ(粉砕) | 32 |
石炭(一般炭) | 25 |
コークス | 28 |
重油 | 42 |
主な構成素材はゴムと金属
- 合成ゴム(耐摩耗性・耐候性を重視)
- スチールコード(引張強度の補強)
- 金属芯金(走行性能の安定化)
ゴムクローラーやタイヤのリサイクル方法とは?
ゴムクローラーは、法律上「産業廃棄物」に分類されます。タイヤも事業に伴って排出されたものは産業廃棄物に該当します。
リサイクルを適切に行うための入り口は正しい廃棄物区分で処理を委託することです。
以前の記事でも区分などについて解説しておりますので、以下をご確認ください。
項目 | ゴムクローラー | タイヤ |
---|---|---|
産業廃棄物区分 | 廃プラスチック類及び金属くず | 廃プラスチック類及び金属くず |
主な構成材 | ゴム、内部スチール、金属芯 | ゴム、スチールベルト、ナイロン等 |
処理義務 | 事業者が産業廃棄物として適正処理 | 事業者が産業廃棄物として適正処理(特に事業用タイヤ) |
リサイクル方法 | 破砕・磁選・再資源化(ゴムチップ・燃料) | リトレッド・破砕・熱分解・セメント原燃料 |
現在の主流なリサイクル方法は3つ
現在、ゴムクローラーやタイヤのリサイクルは大きく以下の3つの方法に分類されます。
破砕リサイクル(物理的再資源化)
タイヤリサイクルのもっとも一般的な方法です。大型の破砕機を用いてタイヤを細断し、ゴムチップや粉末状に加工します。
次に、磁選機などで金属類を分離します。それにより金属部分(スチールコードなど)は製鉄業へ、ゴム部分はゴムマットや化石燃料に代わる代替燃料として各種製造業へ供給されます。
ゴム部分の再利用先例
- ゴムマット
- アスファルト合材
- 緩衝材・防振材
サーマルリサイクル(熱分解)
サーマルリサイクル(熱分解)はタイヤを焼却した際の熱を利用し熱源として再利用するリサイクル方法です。
外国の一部の国ではサーマルリサイクルをリサイクルと認めていないところもありますが、日本では現在認められているリサイクル方法の一つです。
ただしゴムは燃焼する際に高エネルギーとなるため、焼却設備などを導入する際のコストとランニングコストが高く、限られた処理施設でしか対応できません。
燃焼時の生成物例
- 分解油(再生重油など)
- カーボンブラック(顔料・補強材)
- 可燃性ガス(ボイラー燃料)
マテリアルリサイクル(再生ゴム)
破砕したゴムを再加硫または再加工して、再生ゴムとして新しい製品の原料にする方法です。
近年では、リファインラバーと呼ばれる脱硫・脱臭処理技術も注目されています。
このように現在も様々なリサイクル技術が確立されていますが、更に今後革新的なリサイクルへ向けて関係各所では日々研究がなされています。
ゴムクローラーやタイヤリサイクルの新技術
リサイクル技術は年々進化しています。
ゴムやタイヤのように、燃やすだけではもったいない資源を、もう一度使える素材に変える「再資源化」の最新動向をわかりやすく紹介します。
タイヤから出た炭の「においのもと」を取り除く新技術
タイヤを熱で分解すると「炭のかたまり(カーボン)」が残りますが、これには硫黄というにおいの原因となる成分が含まれています。
これを取り除く技術が新潟工科大学で開発されました。
- 特別な状態のメタノール(超臨界メタノール)という液体を使って、硫黄を大幅に減らせます。
- 約400℃の高温で1時間処理することで、硫黄の量を6分の1以下に減らすことができました。
- この「きれいな炭」は、鉄をつくるときの材料として再利用できる可能性があります。
これらはつまり、タイヤの中の炭を無駄にせず、別の産業で使える可能性があるということです。
秋元正道ら/新潟工科大学(2008年頃)
【出典】 超臨界メタノールによる廃タイヤ熱分解炭素の脱硫
高温・高圧の水でタイヤを分解して「油」に変える技術
広島にある研究所では、超高温・高圧の水(超臨界水)を使って、ゴミになったタイヤやプラスチックから「再生できる油」を取り出す実験を行っています。
- 420℃の超高温・20MPa(約200気圧)という環境でタイヤを処理します。
- タイヤのゴムを分解し、ガソリンのような油に変えることができます。
これらから、本来捨てられるタイヤから、再びエネルギー源となる「油」が取り出せるようになるということです。
超臨界技術研究所/広島
【出典】 株式会社超臨界技術研究所HP
プラスチックやゴムの分解技術も進化中
東京農工大学などの研究チームでは、より複雑なゴムやプラスチックを安全に分解する技術を研究中です。
- 「シラン架橋ポリエチレン」と呼ばれる頑丈な素材でも、超臨界の水やメタノールを使えば分解が可能になります。
この技術を応用すれば、今まで難しかったゴム製品のリサイクルも進むと期待されています。
【参考】 静岡大学 博士論文(超臨界・亜臨界流体場利用高分子材料リサイクルプロセスの開発)
ゴムクローラーのリサイクルが難しい理由と今後への期待
ゴムクローラーはタイヤよりもさらにリサイクルが難しいと言われています。理由としては以下があります。
- 内部に金属が組み込まれており、ゴムと一体化していて分解が困難
- リサイクル用の機械や設備が少ない
- 特殊な処理が必要でコストが高く、再利用までに時間がかかる
とはいえ、ここまで紹介したように、技術は確実に進歩しています。
今後、ゴムクローラーのリサイクルもより効率的に、環境に優しく行えるようになることが予想されます。
まとめ
ゴムクローラーやタイヤのリサイクルにはさまざまな技術があり、新たな技術の実用化へ向けて日々研究がなされています。
新たな処理技術の研究と共に必要なのは設計段階から再資源化率を計算した設計とするなど、産業廃棄物処分業者のみならずゴムクローラーやタイヤメーカーと連携していくことが求められます。
排出事業者の皆様もこれらの状況を把握し、産業廃棄物処分業者に処分を委託して終わりではなくその先まで目を向けることが企業価値をより高めるために必要なのではないでしょうか。
新たな技術の開発により持続可能な地球環境の保護が行えることが望まれます。適切な処理で地球環境を守っていきましょう。
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