ゴムクローラー開発の歴史|100年の進化と未来技術を徹底解説

「なぜゴムクローラーは生まれたのか?」

この背景には、以下のような外部環境の変化が深く関係しています。

  • 建設機械市場の変化
  • 農業機械化の加速
  • 都市化とインフラ整備
  • 環境・騒音・安全性への社会要求

つまり、ゴムクローラーの歴史を理解することは”最適な選択基準を持つこと”につながります。

【第1章】鉄クローラーの時代|20世紀初頭〜

クローラー式走行システムは19世紀末〜20世紀初頭に誕生し、農業トラクターや軍事用途を中心に普及しました。
特にアメリカのキャタピラー社は履帯技術発展を牽引した企業として広く知られています。

【参考:https://www.caterpillar.com/en.html

鉄クローラーの特徴

項目特徴
走破性◎ 悪路に強い
重量✕ 非常に重い
路面ダメージ✕ 舗装路を損傷
騒音✕ 大きい
小型化✕ 不向き

当時の用途

  • ブルドーザー
  • 大型ショベル
  • 軍事車両(戦車)
  • 林業・鉱山用車両

社会背景

  • 重機中心の建設現場
  • 未舗装路が多い環境
  • 小型建機の市場ニーズが低い

つまりこの時代は、鉄が最適解だった時代です。しかし都市化が進むとその最適解が変化し始めます。

【第2章】1950〜70年代|小型化ニーズとゴム素材への期待

高度経済成長期、日本を含む多くの国でインフラ整備が進み、(舗装路の拡大 × 都市部工事の増加)が起こりました。

必要とされた性能

  • 舗装面を傷つけない走行
  • 低騒音
  • 小回り性能
  • 軽量化

同時に農業分野では、湿地・泥濘地でのタイヤ沈下が問題となり、「接地圧の低減」 が機械化の大きなテーマになります。

【参考:農研機構

ゴム素材が注目された理由

要素ゴムのメリット
柔軟性路面追従性が高い
低騒音静かな走行が可能
接地圧分散しやすい

この時代は、「ゴムを使用してのクローラー作成は理想だということはわかっていたが、まだ技術が追いつかない時代」でした。

  • 強度不足
  • 補強技術が未発達
  • 耐摩耗性が低い

【第3章】1970年代|日本が世界初の実用ゴムクローラーを誕生させる

1970年代後半、日本企業によって ミニショベル向けの実用ゴムクローラーが世界で初めて開発されます。

出典:株式会社諸岡HPより

技術的ブレークスルー

  • ゴム多層構造
  • ワイヤー補強
  • 芯金(スチールコア)の確立
  • トレッドパターン設計

ゴムクローラーが評価された理由

課題(鉄)解決(ゴム)
路面損傷◎ 舗装路OK
騒音◎ 大幅減
重量◎ 軽量
小型化◎ 機動性向上

参考:日本建設機械工業会の「ミニショベル市場」

実用化が日本で成功した背景

  • 高密度な都市環境
  • 小型建機市場の成長
  • 高品質製造技術

つまり日本は、社会課題 × 技術力 × 市場環境が揃ったことで世界をリードしたのです。

【第4章】1990年代|建設・農業・物流で一気に普及

1990年代は「普及の時代」となりました。ゴムクローラー市場の拡大スピードは加速していきます。

普及が進んだ3分野

① ミニショベル

  • 都市工事でのゴムクローラー標準装備化
  • 工期短縮と移動効率向上

② 農業機械

  • コンバイン、運搬車
  • 湿田・泥濘地で優位性を発揮

③ 特殊運搬・物流

  • 工場・果樹園・畜産など

普及拡大のメカニズム(図)

課題(鉄)→ 作業制限 → 小型化需要 →ゴムクローラー登場 → 作業領域拡大 → 市場拡大

この時代、ゴムクローラーは産業構造を変える存在になりました。

【第5章】2000年代|耐久性・安全性の技術革新

普及が進むと次の課題が浮上します。

  • 破損
  • 脱輪
  • 剥離
  • 寿命

これに対し、技術革新が一気に進みます。

技術革新3つの柱

技術内容効果
芯金強化スチールコア改良脱輪防止・高荷重対応
パターン最適化用途別設計走行性・静音性向上
素材改良高耐摩耗ゴム寿命延長

海外メーカー参入で競争激化

  • コスト競争
  • 高品質化
  • グローバル市場化

この時代、ゴムクローラーは世界標準部材になりました。

【第6章】2010年代|CAE解析×IoTで開発プロセスが進化

2010年代から、開発手法が大きく変わります。

CAE解析の活用

  • 応力シミュレーション
  • 摩耗予測
  • 破断リスク診断

IoTによるスマート化

技術効果
稼働データ収集使用実態の見える化
摩耗モニタリング交換タイミング最適化
故障予測ダウンタイム削減

“開発”と“運用”がデータでつながった時代です。

【第7章】2020年代|脱炭素・循環経済が新たなテーマに

近年は、環境性能が重要な指標になっています。

注目テーマ

  • 軽量化と燃費改善
  • 長寿命化
  • リサイクル研究

【参考:環境省の環境政策

加硫ゴムの再生は依然困難性が高いですが、研究は日々進んでおり実証実験も複数行われています。

主な企業・プロジェクト例

  1. 豊田合成株式会社
    • 「脱硫再生技術」を自社開発し、加硫ゴム中の硫黄架橋結合を選択的に切断して再資源化を試みています。 豊田合成+1
    • また、脱臭技術など製品化へ向けた課題にも取り組んでいます。 豊田合成
    • ただし「完全な実用化・量産化」が済んでいるかは段階によって異なり、実証段階/商用化準備段階と見るのが適切です。
  2. 株式会社日東化工
    • 使用済みタイヤを含むゴム廃材を原料として、再生ゴムマット製造の実証プロジェクトを開始しています。 Yahoo!ファイナンス
    • 2025年3月実証開始、2026年9月稼働予定とされています。これは加硫ゴム廃材の再利用を産業用途(足場マット)に展開する形です。
  3. Bridgestone Corporation
    • 厳密には「加硫ゴムそのもの=履帯用ゴムクローラー含む」の再生技術ですが、同社が使用済みタイヤ(架橋ゴムを含む)を原料とした化学リサイクル・パイロリシスのパイロット実証プラントを岐阜県関市に建設する計画を発表しています。 Bridgestone Global Website+1
    • これも実証段階として、2027年稼働予定と明記されています。

【第8章】未来展望|素材革命とセンサー統合

今後の方向性として期待されるのは、

  • 複合材料(ハイブリッド)
  • バイオ・再生素材
  • センサー統合型クローラー

特に欧州では循環経済が政策として推進されており、技術競争は加速すると見られます。

【年表】ゴムクローラー開発100年史

年代主な出来事
1900年代鉄クローラー普及
1950〜70年代小型化ニーズ台頭
1980年代世界初のゴムクローラー実用化(日本)
1990年代建設・農業で普及
2000年代耐久性革新
2010年代CAE・IoT導入
2020年代脱炭素・循環経済

まとめ:歴史を知ることは”判断力を持つこと”

ゴムクローラー開発の歴史は

課題 → 技術 → 普及 → 新課題 → 革新

というサイクルの連続です。

つまり歴史を理解すると、

  • 製品選定
  • 交換タイミング
  • コスト最適化
  • 将来投資判断

の基準が明確になります。ゴムクローラーについては日々技術の革新があり、様々な再生技術も開発されております。

さらなる利便性向上を期待しましょう。


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