
建設機械や農業機械に使用されるゴムクローラー(無限軌道)は、摩耗や破損により一定期間で交換が必要になる消耗品です。
交換後に排出される使用済みゴムクローラーは「産業廃棄物」に該当し、排出事業者には保管から処分までの適正管理が求められます。
特に「保管基準」を満たしていない場合、廃棄物処理法に基づく行政処分や罰則の対象となる可能性があるため注意が必要です。
本記事では、廃ゴムクローラーの保管基準について、法的根拠や実務上のポイントを整理し、事業者が遵守すべき具体的な対応を解説します。
廃ゴムクローラーは「産業廃棄物」に該当
ゴムクローラーが産業廃棄物に該当することは以前から記事の中で何度も触れており、廃棄する事業者(法律等では「排出事業者」という)が処分完了まで責任をもって管理することが求められます。
産業廃棄物処分業者に引き渡して終わりではなく、産業廃棄物処分業者が最終処分を行い、マニフェストが排出事業者の手元に戻ってくるまで責任を負うことが法律でも示されています。
法律上の区分は「廃プラスチック類」及び「金属くず」に分類
- ゴムクローラーは「廃プラスチック類」及び「金属くず」に分類される。
- いずれにせよ、産業廃棄物として保管・処分が必要。
排出事業者責任
廃棄物処理法第3条に基づき、廃ゴムクローラーを排出する事業者は「適正処理が完了するまで責任を負う」ことが規定されています。
そのため、処分業者に引き渡す前の自社での「保管段階」においても、法令において保管基準が定められており、違反が発生しないよう管理が必要です。
廃ゴムクローラー保管基準の法的根拠
廃棄物処理法施行令・施行規則
廃ゴムクローラーをはじめとする産業廃棄物の保管については、以下の法律・規則に基づきルールが定められています。
- 廃棄物処理法 第12条(排出事業者責任)
- 同施行令 第6条の2
- 同施行規則 第8条(保管基準)
これらにより、排出事業者は適正に保管を行う義務を負います。
保管基準の概要
産業廃棄物を保管する際には、以下の基準を満たす必要があります。
- 飛散・流出・地下浸透の防止
- 悪臭・害虫・火災リスクの防止
- 見やすい場所への掲示(種類・数量・責任者名)
- 区画・区分けされた保管スペースの確保
これらを満たさないで保管を行っていた場合、改善命令や罰則の対象となる可能性があります。
実務で押さえるべき保管のポイント
(事業者の処理)
第12条 事業者は、自らその産業廃棄物(特別管理産業廃棄物を除く。第5項から第7項までを除き、以下この条において同じ。)の運搬又は処分を行う場合には、政令で定める産業廃棄物の収集、運搬及び処分に関する基準(当該基準において海洋を投入処分の場所とすることができる産業廃棄物を定めた場合における当該産業廃棄物にあつては、その投入の場所及び方法が海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律に基づき定められた場合におけるその投入の場所及び方法に関する基準を除く。以下「産業廃棄物処理基準」という。)に従わなければならない。出典:廃棄物の処理及び清掃に関する法律
上記に基づき保管場所、保管方法などを遵守する必要があります。また、これらの違反により実際に改善命令が行われた事例もあり注意が必要です。
保管場所の選定(屋外保管と屋内保管で異なる)
- 屋外保管の場合
雨水浸透を防ぐためコンクリート床やアスファルト舗装をすることが推奨されます。 - 屋内保管の場合
換気設備を設け、湿気・カビ対策を実施。害虫や悪臭など周囲の環境へ悪影響を与えないよう対策を行う必要があります。
保管方法
- パレットや鉄枠を利用し、地面から浮かせて保管
通気性が確保され、害虫などの発生リスクを低減できます。 - 安定した状態で積み重ねる
倒壊防止のため、積み重ねは安定した状態で行いましょう。不安定な状態では崩落のリスクが高まるため注意が必要です。 - 長期保管を避け、速やかに処理を行う
産業廃棄物は長期間ため込むほど処分費用がかさみやすいため、半年に1回など定期的に処理するルールを設けることが望ましいです。
表示義務
保管場所には以下を明示する必要があります。
- 「産業廃棄物保管場所」である旨
- 種類(例:「廃プラスチック類」「金属くず」:廃ゴムクローラー)
- 保管開始日
- 管理責任者氏名

※保管場所掲示板の例、保管の高さの上限
出典:産業廃棄物の適正処理について 排出事業者の皆様へ(千葉県HP)
廃ゴムクローラー特有の保管リスク
廃ゴムクローラーは重量が大きく、かつゴム製品特有の性質から、以下のようなリスクに十分注意する必要があります。
重量・サイズによる転倒・労災リスク
ゴムクローラーは1本あたり数kg~2,000kgと重量が幅広く、大型機械用は数百kgを超えるケースも多いです。
誤った積み方をすると転倒・労災事故につながるため、専用のラックやバンド固定が推奨されます。
火災リスク(ゴム製品特有の危険性)
ゴム製品は可燃性が高く、一度火災が発生すると消火が困難です。
そのため、以下の点に注意しましょう。
- 直射日光の当たらない場所
- 可燃物との距離を確保
- 消火器の設置などが必要です。
害虫・衛生面のリスク
雨水がたまるとボウフラの発生源となり、害虫や悪臭を引き起こす可能性があります。
結果として、従業員の労働環境悪化や近隣への悪影響につながるため、衛生管理にも注意が必要です。
違反した場合のペナルティ
廃ゴムクローラーを含む産業廃棄物の保管基準に違反した場合、行政処分や刑事罰の対象となる可能性があります。
行政処分
- 改善命令(廃棄物処理法 第19条の2)
- 措置命令(同 第19条の5)
刑事罰
- 5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金(法人は最大3億円)
適正な保管を怠ると、許可を受けている業者の場合は許可の取り消しにつながり、企業ブランドにも大きな打撃となります。
保管管理の実務チェックリスト
実務上、以下のポイントを定期的に確認することが重要です。
- 保管スペースは区画・舗装されているか
- 飛散・流出・浸透の防止策があるか
- 表示義務を満たしているか
- 定期的に点検・清掃を行っているか
- 保管量が過剰になっていないか
- 委託先に速やかに引き渡す体制があるか
上記事項についてチェックリストを作成するなど定期的に客観的に確認できる指標を作成すると良いかもしれません。
ゴムクローラー保管に関する事例
行政指導事例
ある建設業者が屋外に大量のゴムクローラーを野積みしていたところ、雨水浸透や害虫発生のリスクを理由に改善命令を受けました。
その結果、コンクリート舗装の実施や雨よけ設備の設置など、適正な保管方法に改善するよう指導されました。
実際に、三重県では以下のような行政処分が行われています。
適正保管事例
ある産業廃棄物処理業者では、ゴムクローラー専用ラックを導入し、転倒防止と通気性の確保を実現しました。
さらに、保管状況を定期的に写真で記録し、委託元に提示することで、排出事業者からの信頼性向上につながったケースもあります。
まとめ

廃ゴムクローラーは産業廃棄物として扱う必要があり、その保管においても廃棄物処理法の保管基準を遵守することが必須です。
実務上は次のポイントを徹底しましょう。
- コンクリートやアスファルト舗装された区画で保管
- 表示義務を徹底
- 飛散・流出・浸透・火災リスクを防止
- 速やかな処分を前提とした管理体制
これらを実践することで、法令違反リスクを回避できるだけでなく、企業の信頼性向上にもつながります。
廃ゴムクローラーの適正保管は、コンプライアンス対応だけでなく、安全な労働環境と地域社会への責任を果たすうえでも重要です。
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