
コンバインやクローラートラクター、農業用運搬車などに使用されるゴムクローラーは、長期間使用すると摩耗、亀裂、芯金の脱落、スチールコードの露出などが発生し、交換が必要になります。
交換後に残ったゴムクローラーを前に、次のような疑問を持つ農業者の方も多いのではないでしょうか。
- コンバインのゴムクローラーは粗大ごみに出せるのか
- 個人農家でも産業廃棄物として処分する必要があるのか
- 農機具店や交換業者に引き取ってもらえるのか
- 1本だけでも回収を依頼できるのか
- 自分で処分場へ持ち込めるのか
- 処分費用はどのように決まるのか
- 処分するまで農地や倉庫に置いておいてもよいのか
使用済みのゴムクローラーは、家庭から出る一般的な粗大ごみとは取扱いが異なります。
農業生産に伴って排出されたゴムクローラーは、原則として産業廃棄物に該当するため、廃棄物処理法に従って適切に処理する必要があります。
この記事では、コンバインや農業機械から取り外したゴムクローラーの分類、処分方法、必要な契約やマニフェスト、費用を抑えるポイントについて解説します。
※産業廃棄物の品目区分や自治体の運用、処理施設の受入条件によって取扱いが異なる場合があります。実際に処分する際は、処理業者および管轄自治体へご確認ください。
コンバインのゴムクローラーは産業廃棄物になる?
農業生産に使用していたコンバインや農業機械から排出されたゴムクローラーは、原則として産業廃棄物に該当します。
農林水産省は、農業分野から排出されるプラスチック類は廃棄物処理法上の産業廃棄物に該当し、農業生産者は排出事業者として自らの責任で適正に処理する必要があると案内しています。
これは、農業法人や大規模農家だけに適用されるものではありません。
個人で農業を営んでいる場合でも、農業生産という事業活動に伴って排出されたものであれば、基本的には事業系の廃棄物として取り扱われます。
したがって、「個人農家だから家庭の粗大ごみに出せる」「1本だけだから一般ごみとして処分できる」とは限りません。
詳しくは、農林水産省の農業由来廃プラスチック適正処理対策でも確認できます。
農業に使用していない個人所有品の場合
農業や事業に使用していない個人所有の機械から発生したゴムクローラーについては、一般廃棄物として判断される可能性があります。
ただし、重量や材質、処理困難性などを理由に、市町村のごみ処理施設では受け入れていない場合があります。
事業で使用していない場合でも、自治体の分別表だけで判断せず、市町村の廃棄物担当窓口へ確認しましょう。
自治体の粗大ごみには出せる?
農業で使用したコンバインのゴムクローラーは、事業活動に伴って排出された産業廃棄物となるため、原則として家庭向けの粗大ごみ収集には出せません。
市町村の粗大ごみ制度は、通常、家庭生活から発生した一般廃棄物を対象としています。
次のような方法で処分することは避けましょう。
- 家庭の粗大ごみとして申し込む
- ごみ集積所へ置く
- 家庭ごみ用の処理券を貼る
- 細かく切って可燃ごみや不燃ごみに混ぜる
- 山林や農地へ放置する
- 自分で野焼きする
市町村によっては事業系廃棄物について独自の案内を行っている場合がありますが、産業廃棄物は市町村の一般廃棄物処理施設で受け入れていないことが一般的です。
処分方法が分からない場合は、市町村の農政担当窓口または産業廃棄物担当窓口へ相談してください。
1本だけでも産業廃棄物として処分する必要がある?
排出量が1本だけであっても、農業生産に伴って発生した産業廃棄物であることは変わりません。
産業廃棄物に該当するかどうかは、基本的に本数や重量ではなく、発生した経緯と廃棄物の種類によって判断されます。
そのため、次のような理由だけで家庭ごみとして処分することはできません。
- 1本しかない
- 小型コンバインのクローラーである
- 個人経営の農家である
- 年に数回しか農機を使用しない
- 長期間倉庫に保管していた
費用を抑えたい場合は、処理施設への持ち込み、地域の回収事業、ほかの廃タイヤなどと合わせた回収が可能か相談するとよいでしょう。
ゴムクローラーは「ゴムくず」ではない?
ゴムクローラーという名称から、産業廃棄物の「ゴムくず」に該当すると考える方もいるかもしれません。
しかし、廃棄物処理法上の「ゴムくず」は、基本的に天然ゴムくずを指します。
合成ゴムくずは、産業廃棄物の区分上「廃プラスチック類」に分類されます。ただし、ゴムクローラーという製品名だけで、すべての製品の材質を断定することはできません。処分時には、実際の材質や金属部分の有無を伝え、必要な許可品目と受入条件を処理業者へ確認しましょう。
コンバインなどに使われるゴムクローラーは、一般的に次のような複数の素材で構成されています。
- ゴム(合成ゴムなど、製品によって材質を確認)
- スチールコード
- 芯金
- 補強材
合成ゴムと芯金・スチールコードなどの金属を含むものは、「廃プラスチック類」と「金属くず」の混合物として取り扱われる場合があります。
処分を依頼する際は、収集運搬業者と処分業者の許可品目に、実際の材質に応じた品目(廃プラスチック類・金属くずなど)が含まれているか確認することが重要です。
自治体や許可証の表記によって確認方法が異なる場合もあるため、「ゴムくずの許可があるから運べる」と判断せず、ゴムクローラーそのものを取り扱えるか業者へ確認しましょう。
コンバインのゴムクローラーを処分する4つの方法
使用済みゴムクローラーの主な処分方法は、次の4つです。
産業廃棄物処理業者に回収を依頼する
最も一般的なのは、ゴムクローラーを取り扱える産業廃棄物処理業者へ回収を依頼する方法です。
回収から処分まで依頼する場合は、次の業者が関係します。
- ゴムクローラーを運ぶ産業廃棄物収集運搬業者
- 切断、破砕などを行う産業廃棄物処分業者
収集運搬と処分を同じ会社が行う場合もあれば、それぞれ別の会社へ依頼する場合もあります。
回収を依頼するメリットは、重量のあるゴムクローラーを自分で処分施設まで運ぶ必要がないことです。
一方、処分費とは別に収集運搬費が発生するため、見積り時には費用の内訳を確認しましょう。
産業廃棄物処理施設へ自分で持ち込む
排出事業者である農家や農業法人が、自らゴムクローラーを処理施設まで運ぶ方法もあります。
自ら排出した産業廃棄物を自ら運搬する場合は、原則として産業廃棄物収集運搬業の許可は必要ありません。
ただし、自社運搬にも次のような基準が適用されます。
- 運搬車両に必要な表示を行う
- 運搬する廃棄物に関する書面を携帯する
- ゴムクローラーが落下しないよう固定する
- 飛散や流出を防止する
- 過積載をしない
- 受入可能な処理施設へ運ぶ
- 処分委託に必要な契約とマニフェストを準備する
処分施設によっては予約が必要な場合や、持ち込み可能な曜日・時間が決められている場合があります。
事前連絡をせずに持ち込むと、許可品目、契約、荷姿などの問題で受入れを断られる可能性があります。必ず処理施設へ確認してから運搬しましょう。
農機具店や交換業者へ相談する
ゴムクローラーの交換を農機具店や整備業者へ依頼した場合、交換後のクローラーを引き取ってもらえることがあります。
ただし、すべての農機具店が使用済みゴムクローラーを引き取れるわけではありません。
確認したいのは、次の点です。
- 使用済みクローラーを引き取っているか
- 引取りは有料か無料か
- どの処理業者へ引き渡すのか
- 産業廃棄物として適切な処理ルートがあるか
- 委託契約書やマニフェストをどのように扱うか
- 処理完了を確認できるか
新しいゴムクローラーを購入したからといって、販売店に当然の引取義務があるわけではありません。
また、単に「置いていってよい」と言われただけで判断せず、適正な処理ルートが確保されているか確認することが大切です。
JAや地域の回収事業を利用する
地域によっては、JA、自治体、農業団体、農業用廃プラスチック適正処理協議会などが、農業由来の廃棄物を共同回収している場合があります。
ただし、農業用ビニールやマルチは対象でも、重量物であるゴムクローラーは対象外となっている可能性があります。
地域の共同回収を利用する場合は、次の事項を確認しましょう。
- ゴムクローラーが回収対象に含まれているか
- 指定された搬入日時
- 搬入場所
- 処理料金
- 泥などの異物除去
- 荷姿や梱包方法
- マニフェスト等の取扱い
農林水産省も、地域の回収日や処理方法が分からない場合は、市町村、JA、地域協議会へ確認するよう案内しています。
ゴムクローラーの処分費用はどのように決まる?
ゴムクローラーの処分費用は、どの処分業者に依頼するかにより異なり、一律に1本いくらと決まっているわけではありません。
主に次の条件によって変わります。
▶ ゴムクローラーの重量
ゴムクローラーはサイズによって重量が大きく異なります。
小型の農業用運搬車に使われるものと、大型コンバインやクローラートラクターに使われるものでは、1本あたりの重量に大きな差があります。
重量単価で処分費を計算する処理施設では、正確な重量によって最終的な料金が決まります。
▶ 本数とサイズ
同じ本数でも、幅、全長、厚さ、芯金の大きさなどによって必要な処理時間が変わります。
見積りを依頼する際は、次の情報を伝えましょう。
- 本数
- ゴムクローラーの幅
- 写真
- 現在の保管場所
▶ 回収場所までの距離
回収を依頼する場合は、処分費に加えて収集運搬費が発生します。
運搬費は、処理施設から回収場所までの距離などによって変わります。
▶ 積込作業の条件
ゴムクローラーは重量があるため、人の手だけでは積み込めない場合があります。
次のような条件によって、必要な車両や作業員数が変わります。
- フォークリフトが使用できるか
- 重機で積込みできるか
- ユニック車が必要か
- クローラーが農地の奥に置かれていないか
- 回収車両が保管場所まで進入できるか
- ほかの廃棄物の下に埋もれていないか
▶ 泥や異物の付着
大量の泥、油、草木、金属部品などが付着していると、受入条件や処分費用が変わる可能性があります。
重量で料金を計算する場合、付着した泥の重量も計量結果に含まれることがあります。
見積り前に、無理のない範囲で大きな泥や異物を取り除きましょう。
▶ 農機用クローラーの処理費用を概算で確認する
株式会社オーシャンの廃ゴムクローラー・廃タイヤのサービスページでは、「農機用クローラー」の横幅と本数を入力して、処理費用の概算を確認できます。
シミュレーションはクローラー新品時の重さを基準にした参考値です。実際の処理費用は前後する可能性があり、収集運搬費は別途、地域や回収条件によって変わります。正確な費用は写真・本数・サイズ・保管場所を伝えてお問い合わせください。
見積り依頼時に撮影しておきたい写真
ゴムクローラーの回収や処分の見積りでは、写真があるとサイズ、数量、積込条件を判断しやすくなります。
次の写真を撮影しておくと、確認がスムーズです。
- ゴムクローラー全体が分かる写真
- 複数本ある場合は、すべての本数が分かる写真
- 幅や厚さが分かる写真
- 刻印やサイズ表記の写真
- 泥、油、金属部品などの付着状態が分かる写真
- 保管場所全体の写真
- 回収車両の進入経路が分かる写真
写真だけで正確な重量を確定することはできませんが、車両や積込方法の選定に役立ちます。
自分で切断すれば処分費は安くなる?
ゴムクローラーを小さく切断すれば運びやすくなると考える方もいるかもしれません。
しかし、ゴムクローラーの内部にはスチールコードや芯金が組み込まれており、一般的なゴム製品のように簡単には切断できません。
自己流で切断すると、次のような危険があります。
- 切断工具の刃が破損する
- 金属片やワイヤが飛散する
- 露出したスチールコードで負傷する
- 摩擦熱や火花が発生する
- クローラーが跳ねたり動いたりする
- 切断機へ過剰な負荷がかかる
また、切断したからといって産業廃棄物ではなくなるわけではありません。
処分施設によっては、原形のままの方が受け入れやすい場合もあります。処理業者から具体的な指示を受けていない限り、無理に切断せず、そのままの状態で相談することをおすすめします。
農地や倉庫に長期間置いておいてもよい?
使用済みゴムクローラーを処分するまで、排出事業者の敷地内で一時的に保管することはあります。
ただし、産業廃棄物として排出することが決まった後は、廃棄物処理法上の保管基準に従って管理する必要があります。
主な注意点は次のとおりです。
- 保管場所の範囲を明確にする
- 必要な掲示を行う
- 保管基準を超える高さまで積み上げない
- 崩落や転倒を防止する
- 雨水がたまらないようにする
- 火気の近くに置かない
- 道路や隣接地にはみ出さない
- 長期間放置しない
- 処分予定や保管数量を管理する
ゴムクローラーや廃タイヤを屋外に大量保管すると、火災時に消火が困難になるほか、雨水の滞留や害虫発生などの問題につながる可能性があります。
「そのうち処分する」と考えて保管量を増やさず、一定量になった段階で計画的に処分しましょう。
過去には屋外放置することの危険性について記載した記事も公開しておりますので、併せて確認してみましょう。
処分を業者へ委託する際に必要な手続き
農家や農業法人が産業廃棄物処理業者へゴムクローラーの処理を委託する場合は、主に次の手続きが必要です。

▶ 許可証を確認する
収集運搬業者と処分業者が、ゴムクローラーの運搬・処分に必要な許可を持っているか確認します。
許可証では、次の点を確認しましょう。
- 許可を受けている自治体
- 許可品目
- 許可の有効期限
- 積替え保管の有無
- 処分方法
- 会社名と所在地
▶ 委託契約書を締結する
産業廃棄物の収集運搬や処分を他人へ委託する場合は、原則として事前に書面による委託契約を締結します。
収集運搬業者と処分業者が別会社の場合は、排出事業者がそれぞれの業者と契約することが基本です。
▶ マニフェストを交付または登録する
ゴムクローラーを処理業者へ引き渡す際は、紙マニフェストを交付するか、電子マニフェストへ必要事項を登録します。
マニフェストは処理業者が代わりに用意する場合もありますが、交付または登録の責任は排出事業者にあります。
処理後は、収集運搬と処分が終了したことを返送票または電子マニフェストの情報で確認します。
処分業者を選ぶ際のチェックポイント
ゴムクローラーの処分を依頼する際は、料金だけでなく次の点を確認しましょう。
- ゴムクローラーの処理実績がある
- 依頼する運搬・処分の業務に必要な許可を持っている
- 許可の有効期限が切れていない
- ゴムクローラーに必要な許可品目が含まれている
- 委託契約書を締結できる
- マニフェストに対応している
- 処理施設と処理方法を確認できる
- 回収車両や積込設備がある
- 処分費と運搬費の内訳が明確である
- 処理後のリサイクル方法を説明できる
極端に安い料金を提示する業者や、契約書やマニフェストは不要だと説明する業者への委託は避ける必要があります。
処理を委託した後も、排出事業者としての責任がなくなるわけではありません。
コンバインのゴムクローラー処分に関するよくある質問
農業生産に使用したコンバインから排出されたゴムクローラーであれば、個人経営か法人経営かを問わず、原則として産業廃棄物に該当します。
農業生産者は排出事業者として、適正に処理する必要があります。
処理業者によっては1本から対応できます。
ただし、少量の場合は処分費に対して収集運搬費の割合が大きくなる可能性があります。持ち込み処分や、廃タイヤなどとの同時回収が可能か相談してみましょう。
農機具店が引取りに対応している場合もありますが、当然に引き取ってもらえるわけではありません。
処理費用、処理業者、契約書、マニフェストなどの取扱いを事前に確認してください。
切断、亀裂、芯金の脱落などがあるゴムクローラーでも処分できる場合があります。
ただし、露出したワイヤや芯金でけがをする危険があるため、取扱いに注意し、状態が分かる写真を処理業者へ送りましょう。
少量の泥であれば対応できる場合もありますが、大量の土砂が付着していると受入条件や料金に影響する可能性があります。
大きな泥の塊は可能な範囲で取り除き、回収前に写真を送って確認してください。
ゴムクローラーの販売店に、法律上一律の引取義務があるわけではありません。
販売店や交換業者が独自に回収サービスを行っている場合は、その条件と適正な処理ルートを確認しましょう。
まとめ
コンバインや農業機械から取り外した使用済みゴムクローラーは、農業生産に伴って排出された場合、原則として産業廃棄物として処理する必要があります。
特に重要なポイントは次のとおりです。
- 個人農家でも農業生産に伴う廃棄物は事業系として扱われる
- 合成ゴムは原則として「廃プラスチック類」に分類される
- 芯金等を含むため「金属くず」も関係する場合がある
- 家庭向けの粗大ごみには原則として出せない
- 1本だけでも産業廃棄物であることは変わらない
- 回収、持ち込み、農機具店、地域回収などの方法がある
- 委託時には許可証、契約書、マニフェストを確認する
- 自分で無理に切断せず、原形のまま処理業者へ相談する
- 見積り時には写真、本数、サイズ、保管場所を伝える
収穫時期を終えてから慌てて処分先を探すのではなく、ゴムクローラーを交換する段階で処分方法まで決めておくとスムーズです。
参考資料:
廃タイヤ・ゴムクローラー等の収集運搬・処分は株式会社オーシャンへ
株式会社オーシャンでは、「産業廃棄物処分業」と「産業廃棄物収集運搬業」の許可を取得し、廃タイヤ・ゴムクローラー等の回収から処分まで対応しています。ご相談の際は、写真・本数・サイズ・保管場所をお知らせください。回収場所や積込条件を確認のうえ、対応可能な回収方法と費用、必要な手続きをご案内します。
詳しくは以下をご参照ください。





