
産業廃棄物の処理を委託した後、排出事業者が必ず確認しなければならないもののひとつが、マニフェストの返送状況です。
紙マニフェストを使用する場合、排出事業者の手元にはA票が残り、その後、収集運搬や処分の終了に応じてB2票、D票、E票などが返送されます。
しかし実務では、
「B2票がなかなか返ってこない」
「D票やE票が未返送のままになっている」
「どの時点で業者へ確認すべきか分からない」
「期限を過ぎた場合、どのような対応が必要なのか知りたい」
といったケースもあります。
マニフェストは、交付して終わりではありません。排出事業者は、返送された票を確認し、委託した産業廃棄物が適正に運搬・処分されているかを把握する必要があります。
この記事では、産業廃棄物マニフェストが返ってこない場合に、排出事業者が確認すべきポイントと対応の流れを解説します。
マニフェストが返ってこない状態とは
「マニフェストが返ってこない」といっても、どの票が返ってこないのかによって意味が異なります。
紙マニフェストでは、主に次の票の返送状況を確認します。
- B2票:収集運搬の終了を確認する票
- D票:処分の終了を確認する票
- E票:最終処分の終了を確認する票
B2票が返ってこない場合は、収集運搬が終了しているか、処分業者へ引き渡されているかを確認する必要があります。
D票が返ってこない場合は、中間処理などの処分が終了しているかを確認します。
E票が返ってこない場合は、最終処分まで完了しているかを確認する必要があります。
つまり、単に「返送が遅れている」という事務的な問題だけでなく、運搬・処分・最終処分のどこかで確認が止まっている可能性があります。
B2票・D票・E票の役割
マニフェストの未返送に対応するためには、まず各票の役割を整理しておくことが大切です。
B2票
B2票は、収集運搬業者から排出事業者へ返送される票です。
収集運搬業者が産業廃棄物を処分業者などへ引き渡し、運搬が終了したことを排出事業者が確認するために使います。
B2票が返ってこない場合は、まず収集運搬業者へ連絡し、運搬が終了しているか、処分業者へ引き渡されているか、返送漏れがないかを確認します。
D票
D票は、処分業者から排出事業者へ返送される票です。
中間処理や処分が終了したことを確認するための票です。
D票が返ってこない場合は、処分業者へ処分の進捗を確認します。収集運搬業者を通じて委託している場合でも、排出事業者として処分業者や委託契約の内容を確認できる状態にしておくことが重要です。
E票
E票は、最終処分の終了を確認するための票です。
中間処理後に残さが最終処分される場合など、処理工程が複数段階にわたるときは、E票の返送まで時間がかかることがあります。
ただし、時間がかかるからといって、未確認のまま放置してよいわけではありません。E票は、排出事業者が最終処分まで確認するための重要な票です。
マニフェストの返送期限
紙マニフェストの場合、排出事業者は、マニフェスト交付の日から一定期間内に写しの送付を受けない場合、処理状況を確認し、必要な措置を講じる必要があります。
一般的な産業廃棄物の場合、目安は次のとおりです。
| 票の種類 | 確認する内容 | 期限の目安 |
|---|---|---|
| B2票 | 収集運搬の終了 | 交付日から90日以内 |
| D票 | 処分の終了 | 交付日から90日以内 |
| E票 | 最終処分の終了 | 交付日から180日以内 |
特別管理産業廃棄物の場合、B2票・D票については60日以内とされています。E票については、通常の産業廃棄物と同じく180日以内と整理されています。
出典:廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則 | e-Gov 法令検索
ここで注意したいのは、期限を過ぎるまで何もしなくてよいという意味ではないことです。
通常の処理であれば、B2票やD票はもっと早く返送されるケースも多くあります。予定より返送が遅れている場合は、90日や180日を待たず、早めに委託先へ確認することが望ましいです。
マニフェストが返ってこない場合の対応手順
マニフェストが返ってこない場合は、感覚的に「まだ届いていない」で済ませず、順番に確認していくことが大切です。
最初に確認するのは、対象となるマニフェスト番号と交付日です。
複数の回収や複数の処分先がある場合、どのマニフェストが未返送なのかを明確にしないと、収集運搬業者や処分業者へ確認しても話が進みにくくなります。
確認する内容は次のとおりです。
- マニフェスト番号
- 交付年月日
- 排出事業場
- 産業廃棄物の種類
- 数量
- 収集運搬業者
- 処分業者
- 運搬先・処分先
A票や社内の管理表を見ながら、対象のマニフェストを特定しましょう。
次に、B2票、D票、E票のうち、どの票が返っていないのかを確認します。
B2票だけが返っていないのか、B2票は返っているがD票が返っていないのか、D票までは返っているがE票が返っていないのかによって、確認先が変わります。
B2票が未返送であれば、主な確認先は収集運搬業者です。
D票やE票が未返送であれば、処分業者への確認が必要になります。
B2票が返ってこない場合は、収集運搬業者へ連絡します。
確認する内容は次のようなものです。
- 運搬は終了しているか
- 処分業者へ引き渡し済みか
- 運搬終了年月日はいつか
- B2票を発送済みか
- 記載漏れや事務処理の遅れがないか
- マニフェスト番号に相違がないか
単なる返送漏れであれば、B2票の発送状況を確認してもらいます。
一方で、まだ運搬が終了していない、処分業者へ引き渡されていない、運搬先が変更されているなどの事情がある場合は、委託契約や処理状況との整合性を確認する必要があります。
D票やE票が返ってこない場合は、処分業者へ処理状況を確認します。
確認する内容は次のとおりです。
- 処分は終了しているか
- 処分終了年月日はいつか
- D票を発送済みか
- 最終処分終了の確認は完了しているか
- E票の返送予定はいつか
- 処理工程上、通常より時間がかかっている理由はあるか
中間処理を行う場合、最終処分の確認まで時間がかかることもあります。ただし、処理が遅れている理由や返送予定が不明確なままでは、排出事業者として管理できているとはいえません。
未返送の理由を確認し、記録に残しておくことが重要です。
委託先へ確認した内容は、口頭で終わらせず、社内で記録しておきましょう。
記録しておきたい内容は次のとおりです。
- 確認した日
- 確認した相手
- 未返送の票の種類
- 処理状況
- 返送予定日
- 必要な追加対応
- 再確認予定日
メールで確認しておくと、後から経緯を追いやすくなります。
行政への報告が必要になった場合にも、どのような確認を行い、どのような措置を講じたかを説明しやすくなります。
期限を過ぎた場合は措置内容等報告書が必要になる
マニフェストが一定期間内に返送されない場合、排出事業者は処理状況を把握し、生活環境の保全上の支障の除去または発生防止のために必要な措置を講じる必要があります。
また、その措置内容を、管轄する自治体へ「措置内容等報告書」として提出しなければならない場合があります。
紙マニフェストの場合、代表的には次のようなケースです。
- 交付日から90日以内にB2票・D票の送付を受けない場合
- 特別管理産業廃棄物で、交付日から60日以内にB2票・D票の送付を受けない場合
- 交付日から180日以内にE票の送付を受けない場合
- 法定事項が記載されていないマニフェストの写しを受け取った場合
- 虚偽の記載があるマニフェストの写しを受け取った場合
- 処理業者から処理困難通知などを受けた場合
報告期限は、期限が経過した日や該当事由を知った日などから30日以内とされています。
出典:廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則 | e-Gov 法令検索
提出先は、排出事業場を管轄する都道府県や政令市などです。自治体によって窓口や様式の案内が異なるため、実際に提出が必要な場合は、管轄自治体の案内を確認しましょう。
電子マニフェストの場合はどうなるか
電子マニフェストの場合、紙のB2票・D票・E票が返送されるわけではありません。
電子マニフェストでは、収集運搬業者や処分業者がシステム上で運搬終了報告、処分終了報告、最終処分終了報告を登録し、排出事業者がその報告を確認します。
紙マニフェストでいう「返送確認」は、電子マニフェストでは「終了報告の登録状況確認」に置き換わると考えると分かりやすいです。
電子マニフェストでも、所定の期限内に運搬又は処分の終了報告がない場合などは、排出事業者が処理状況を確認し、必要な措置を講じる必要があります。
紙よりも確認しやすい面はありますが、システムに登録されているから安心というだけでなく、未報告や内容の不一致がないかを定期的に確認することが大切です。
マニフェスト未返送を防ぐには
ここでは、マニフェストの未返送そのものを防ぐために、原因・日常の管理方法・実務チェックの3つの観点から整理します。
よくある原因
マニフェストが返ってこない原因には、さまざまなものがあります。
よくある原因としては、次のようなものが考えられます。
- 収集運搬業者や処分業者の返送漏れ
- 記載不備により処理が止まっている
- マニフェスト番号の管理ミス
- 処分業者側で処理が完了していない
- 最終処分の確認に時間がかかっている
- 排出事業者側で受領後の保管場所を誤っている
- 郵送や社内回覧の途中で紛失している
- 契約内容と実際の処理内容に相違がある
単なる事務処理の遅れで済む場合もありますが、処理状況に問題がある可能性もあります。
そのため、未返送に気づいた時点で早めに確認し、原因を明確にすることが重要です。
防ぐための管理方法
マニフェストの未返送を防ぐには、交付後の管理方法をあらかじめ決めておくことが大切です。
おすすめの管理方法は次のとおりです。
- マニフェスト番号ごとに一覧表を作成する
- 交付日、回収日、返送日を記録する
- B2票、D票、E票ごとに返送状況を管理する
- 返送予定日を過ぎたら早めに確認する
- 月1回など定期的に未返送リストを確認する
- 収集運搬業者・処分業者の連絡先を一覧化する
- A票、B2票、D票、E票をセットで保管する
- 件数が多い場合は電子マニフェストの導入も検討する
特に紙マニフェストを多く扱う場合、返送確認を担当者の記憶に頼ると漏れが起こりやすくなります。
Excelや管理システムなどで、交付日からの日数を確認できるようにしておくと、期限超過を防ぎやすくなります。
実務で確認したいチェックリスト
マニフェストが返ってこない場合は、次のチェックリストを使うと整理しやすくなります。
| 確認項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 対象マニフェスト | 番号、交付日、排出事業場を確認したか |
| 未返送の票 | B2票、D票、E票のどれが未返送か |
| 期限 | 90日、60日、180日の期限を確認したか |
| 収集運搬業者 | 運搬終了・B2票発送状況を確認したか |
| 処分業者 | 処分終了・D票/E票発送状況を確認したか |
| 契約内容 | 委託契約書の品目・運搬先・処分先と整合しているか |
| 記録 | 確認日、相手、回答内容を記録したか |
| 行政報告 | 措置内容等報告書の提出要否を確認したか |
このように整理しておくと、委託先への確認や社内報告、自治体への相談がスムーズになります。
よくある質問
期限内であれば、まずは収集運搬業者へ確認します。
ただし、マニフェスト交付の日から90日以内にB2票の送付を受けない場合、特別管理産業廃棄物では60日以内に送付を受けない場合は、処理状況を確認し、必要な措置を講じたうえで、管轄自治体へ報告が必要になる場合があります。
期限を過ぎるまで放置するのではなく、返送が遅れていると気づいた時点で早めに確認しましょう。
D票は処分終了を確認する票なので、基本的には処分業者へ確認します。
ただし、収集運搬業者とのやり取りの中で処分場への搬入状況が確認できる場合もあります。まずは契約書やA票を確認し、処分業者、処分施設、マニフェスト番号を整理したうえで確認するとよいでしょう。
E票は最終処分の終了を確認する票であり、中間処理後の工程によっては返送まで時間がかかることがあります。
ただし、交付日から180日以内にE票の送付を受けない場合は、処理状況を確認し、必要な措置を講じる必要があります。遅れている理由や返送予定を処分業者へ確認し、記録しておくことが大切です。
期限を過ぎている場合は、単なる返送漏れであっても、法令上の報告対象となる可能性があります。
実際の対応は状況や自治体の運用にもよるため、期限超過が発生した場合は、管轄自治体の案内を確認し、必要に応じて相談することをおすすめします。
電子マニフェストでは紙の票の返送はありませんが、運搬終了報告、処分終了報告、最終処分終了報告の登録状況を確認する必要があります。
紙の紛失や郵送遅れは避けやすくなりますが、未報告や入力内容の誤りがないかを確認することは必要です。
排出事業者が処理状況を確認せずに放置すると、排出事業者責任を十分に果たしていないと判断される可能性があります。
マニフェストは、産業廃棄物が適正に処理されたことを確認するための仕組みです。未返送に気づいた場合は、早めに委託先へ確認し、必要な対応を取ることが大切です。
まとめ
産業廃棄物マニフェストが返ってこない場合、まず重要なのは、どの票が返ってきていないのかを整理することです。
B2票は収集運搬の終了、D票は処分の終了、E票は最終処分の終了を確認する票です。
B2票やD票が返ってこない場合は、交付日から90日以内、特別管理産業廃棄物では60日以内がひとつの目安になります。E票は、交付日から180日以内に返送される必要があります。
期限内であっても、返送が遅れている場合は、収集運搬業者や処分業者へ早めに確認しましょう。期限を過ぎた場合や、法定事項の未記載、虚偽記載、処理困難通知などがある場合は、措置内容等報告書の提出が必要になる場合があります。
マニフェストは、交付するだけでなく、返送状況を確認し、適切に保存することまでが重要です。
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